リーダーとして絶対に身につけておくべき「新人育成」の極意とは?

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■部下を指導するには、「基礎」、「基本」、「応用」の三つの段階に分けて考えよ

 桜が花開く4月、多くの企業が新入社員とともに新たにスタートしたことだろう。
 だが、世の上司の多くは、「今どきの若者をどう扱っていいか分からない」「若い人たちとのコミュニケーションの取り方が、今一つつかめない」などと困っていることが多いそうだ。
 南海、ヤクルト、阪神、楽天などで24年間、プロ野球監督を務められた野村克也も、新人の育成には頭を悩まされたというが、新著『一流のリーダーになる 野村の言葉』のなかで、こう語っている。

野村克也
野村克也

 プロ野球選手はビジネスマンとは違い、バット一本、あるいはグローブ一つで勝負するが故に職人気質を持った選手がいる。そのようなタイプは自分の技術にかんしてのこだわりが強く、うまくいこうがいかまいが、おいそれと変えようとしない。これでは本当の意味でプロ野球選手として花開くのは難しいことだ。
 そこで私は、選手を指導する際、「基礎」、「基本」、「応用」の三つの段階に分けて考えていた。
 ここでいう「基礎」とは、仕事をするための土台となる部分であり、「基本」は、仕事における判断や行動の指針、そして最後の「応用」が、それらをもとに実地に移すことである。

 基礎、基本、応用の順に身につけていないと、結果が出せなくなったときに、その打開策が見出せなくなる。「なぜ失敗したのか」、「なぜうまくいったのか」、その根拠、理由が分からない。根拠がなく、たまたまうまくいっただけの結果オーライを繰り返しているようでは、壁にぶち当たったときに乗り越えることができないと、野村氏は分析している。
 さらに驚くことに、野村氏が監督を務めたヤクルト、阪神、楽天ではいずれも「基礎」や「基本」をおろそかにし、「応用」から身につけたがる選手が多かったという。弱い組織ほど大事な根幹となる部分を身につけようとしないという共通項を見つけたのは、野村氏自身、勉強になったというが、それと同時に「このままでは永遠に強い組織になることなどできないな」と痛感したそうだ。

■「鈍感は悪である」、最大の理由とは

 さらに野村氏は、「鈍感は最大の悪」であると主張するのと同時に、若い人の間で鈍感人間が増えたような気がしてならないと警鐘を鳴らしている。

 感じる力、すなわち「感性」というものは、人間が生きていくうえで大切な要素である。感性がなければ視野が狭くなるし、些細なことに気づくはずもない。些細なことの中に、伸びるために重要なことが潜んでいるケースは少なくない。感性の乏しい人間は、それに気づけない。すなわち鈍感な人間だということだ。

 野村氏はプロ野球の監督を経験してきて、感じる力を持った選手は何らかの夢を持っていることを発見したという。「プロ野球選手として成功して1億円稼ぎたい」「野球界を代表する選手になりたい」「将来はメジャーリーグに挑戦してみたい」、そのためには今、必要なことは何か、常に探し続けているのだ。感性を研ぎ澄まし、目を光らせているからこそ、先輩の技術を盗むことができる。
 だが、大半以上のプロ野球選手はそうではなく、何となくグラウンドにやってきて、何となく野球をやって終える。グラウンドに来て、ユニフォームを着ただけでどこか満足感にあふれているという選手を数多く見てきたそうだ。
 とくにBクラスに低迷している球団の選手は、こうした特徴を持った選手が多く、それがひいてはチームの低迷の一因になっているのではないかと分析している。
 ただし、これは何もプロ野球に限った話ではないだろう。たとえば会社でも、始業時間までになんとか出社してきて、そのまま惰性で勤務時間を過ごし、終業時間になれば、「おつかれさまでした」とそそくさと帰ってしまう社員がいる。「こうしたタイプはえてして鈍感なタイプが多い」(野村氏)。
 だが、一流のプロ野球選手になれば、感じる力に長けている。やるべきことを見つけ、すぐに取り組む。日々の練習にも目的意識を持って取り組むため、試合でもコンスタントに実力を発揮していく。そうして首脳陣はもちろんのこと、チームメイトからもその働きぶりを認められ、やがてはチームの中心選手へとなっていく。
 だからこそリーダーは、部下に対して感じる力を喚起させるような問いかけをしてあげるべきだ。今、している仕事はなぜ行っているのか、その目的、理由を感じる力や考える力を育てていかなければならない、と野村氏は力説する。

 このほかにも野村氏は同書のなかで新人だけでなく、中堅やベテラン、指導者を育てるにはどのようにしたらよいのかにいたるまで、自身の過去の経験を踏まえて具体的なエピソードとノウハウを交えながら解説している。

新星出版社
2017年4月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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