紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする「キノベス!2019」 第1位は瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

文学賞・賞

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 紀伊國屋書店が発表する「キノベス!2019」が決定した。

「キノベス!2019」は、過去1年間に出版された新刊(文庫化タイトル除く)を対象に、紀伊國屋書店スタッフが「自分で読んでみて本当に面白い、ぜひ読んでほしい本を選び、お客様におすすめしよう」という企画。

 今年は18名の選考委員が、紀伊國屋書店の全スタッフから公募した推薦コメントを熟読し、ベスト30を決定。その中で今年の第1位に選ばれたのは、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)となった。

『そして、バトンは渡された』は、名字が4回変わり、父親が3人、母親が2人いる17歳の森宮優子の人生を描いた感動作。紀伊國屋書店・ゆめタウン広島店の奥野智詞さんは、本作について〈この物語は家族の成長の物語ではない。「家族」という外枠が変わってしまうことはあるけれど、その中で変わらないことを描いた物語だ。「父」「母」「娘」という言葉がとけてしまうような信頼のかたち。ラスト数ページ、物語の視点は変わる。未来へ“バトン”を渡そうとする想いをもつことの幸福に包まれる〉とコメントを寄せている。

 また、著者の瀬尾さんから喜びの声が寄稿されており、その中で小さい頃の夢や執筆秘話などを明かしているほか、この寄稿文は紀伊國屋書店の公式サイトに無料で公開されている。

キノベス!2019

 そのほか、第2位は平野啓一郎さんの『ある男』(文藝春秋)、3位は村田沙耶香さんの『地球星人』(新潮社)となった。ベスト30は以下の通りとなり、スタッフが各作品に寄せたコメントは紀伊國屋書店全店に配布されている小冊子、または紀伊國屋書店公式サイトで公開されている。

1位 『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)

【奥野智詞・ゆめタウン広島店】
 この物語は家族の成長の物語ではない。「家族」という外枠が変わってしまうことはあるけれど、その中で変わらないことを描いた物語だ。「父」「母」「娘」という言葉がとけてしまうような信頼のかたち。ラスト数ページ、物語の視点は変わる。未来へ“バトン”を渡そうとする想いをもつことの幸福に包まれる。

2位 『ある男』平野啓一郎(文藝春秋)

【奥野菜緒子・ゆめタウン廿日市店】
 ある男の人生をたどるうちに、自らの人生との境界が曖昧になる。別人の人生を生きるのは、どんな気分だろう。過去は私の現在にとって、どんな意味を持つのか。深い思索と感動へ導かれる、稀有な読書体験をした。

3位 『地球星人』村田沙耶香(新潮社)

【安倍香代・ゆめタウン徳島店】
 言葉は失われ、天地はひっくり返り、空は裂けて緑色に、大地は割れて深紅に染まり、人は人間という型をぶち壊してしまった。この一つの物語で世界を破壊してしまう村田沙耶香とはいったい何者で、どんな世界を見ているのだろう。こんなに恐ろしくて、こんなに神々しい物語を私は未だかつて知らない。知らないからこそ、彼女の見ている世界を私も見てみたい。

4位 『みえるとか みえないとか』ヨシタケシンスケ〔さく〕/伊藤亜紗〔そうだん〕(アリス館)
5位 『アウシュヴィッツの歯科医』ベンジャミン・ジェイコブス(紀伊國屋書店)
6位 『文字渦』円城塔(新潮社)
7位 『さざなみのよる』木皿泉(河出書房新社)
8位 『歌集 滑走路』萩原慎一郎(KADOKAWA)
9位 『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』松本ひで吉(講談社)
10位 『熱帯』森見登美彦(文藝春秋)

11位 『骨を弔う』宇佐美まこと(小学館)
12位 『火のないところに煙は』芦沢央(新潮社)
13位 『ミステリと言う勿れ』田村由美(小学館)
14位 『クマとたぬき』帆(KADOKAWA)
15位 『本を贈る』笠井瑠美子/川人寧幸/久禮亮太/島田潤一郎/橋本亮二/藤原隆充/三田修平/牟田都子/矢萩多聞/若松英輔(三輪舎)
16位 『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ(新潮社)
17位 『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理(KADOKAWA)
18位 『1ミリの後悔もない、はずがない』一木けい(新潮社)
19位 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(東洋経済新報社)
20位 『ののはな通信』三浦しをん(KADOKAWA)
21位 『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン(東京創元社)
22位 『#名画で学ぶ主婦業』田中久美子(宝島社)
23位 『マリコ、うまくいくよ』益田ミリ(新潮社)
24位 『原爆 広島を復興させた人びと』石井光太(集英社)
25位 『My Room 天井から覗く世界のリアル 55ヵ国1200人のベッドルーム』ジョン・サックレー(ライツ社)
26位 『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』土屋健(技術評論社)
27位 『夢印』浦沢直樹(小学館)
28位 『日本のヤバい女の子』はらだ有彩(柏書房)
29位 『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子(河出書房新社)
30位 『14歳、明日の時間割』鈴木るりか(小学館)

Book Bang編集部
2019年3月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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