『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』
- 著者
- ジョナサン・マレシック [著]/吉嶺英美 [訳]
- 出版社
- 青土社
- ジャンル
- 哲学・宗教・心理学/哲学
- ISBN
- 9784791775910
- 発売日
- 2023/10/27
- 価格
- 2,420円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』ジョナサン・マレシック著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
バーンアウトシンドローム(燃え尽き症候群)とは、一九七四年に米国の心理学者によって定義された症候群である。継続的に仕事や役務に打ち込んできた人が、あるときから目的達成への意欲や活力を失ってゆく。あたかも魂が燃え尽きてしまったかのように。
著者自身も、これによってやりがいのある仕事を失った経験者だ。その実体験を踏まえ、本書ではまず厳密に理解されにくくなっているバーンアウトの定義を整理し、社会の様々な立場にいる人びとに取材して、現代のバーンアウトの実態と対処法をよりアップデートした形で考察している。
副題にもある「バーンアウト文化」とは、仕事を自分のアイデンティティとし、仕事が人に尊厳を与え目的意識を育むと、当たり前のように思い込んでいる文化だ。それはまやかしなのではないか。修道士の祈りの時間を優先して高収益の事業をやめた修道会の話はドラマみたいに面白いし、コロナ禍でのエッセンシャル・ワーカーと非エッセンシャル・ワーカーの意識の対比については、誰もが身近に引きつけて考えることができるだろう。吉嶺英美訳。(青土社、2420円)