『親しい友人たち』
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親しい友人たち [著]山川方夫[編]高崎俊夫
[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)
「三田文学」の編集長を務め江藤淳らを見出し、その後自作の小説5作が芥川賞、1作が直木賞の候補になるなど文才を発揮したものの、交通事故で34年の短い生涯を閉じた山川方夫。彼が遺した短篇やエッセイ風連作などを収録した、歿後50年記念出版の文庫オリジナル作品集。
恋人同士の甘い会話に隠された思いが最後に表出する「赤い手帖」。戦時中、疎開先で苦い体験をした少年が大人になり久々にその町を訪れ、ある事実を知る「夏の葬列」。とある失恋経験の告白が、なんとも微笑ましい余韻を残す「はやい秋」。容赦のない展開から思わずニヤリとする結末まで、まったく古びない、鮮やかで上質な作品が並ぶ。