『現在落語論』
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談志の孫弟子が綴る落語の現在のありよう
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
談志が『現代落語論』を書いた50年後、孫弟子による『現在落語論』が出た。現代落語論は当時の落語少年のバイブルと呼ばれ、私もその影響を強く受けてこの道を志したが、現在落語論もまた広く若者の支持を得るだろう。
談志はそれを29歳で著したが、著者もまた31歳と年齢が近く、しかし談志は真打であったが著者は二つ目で、そしてまだ入門6年なのである。年上だがキャリアは浅い。著者はそこをどう補い、埋めたのか。それは著者がいきなりの落語家志望ではなかった点にあろう。
京都出身の彼は最初、面白いこと、広義で言う「お笑い」を目指した。そして試行錯誤の末、落語を漫才やコントなどと同じく、「『笑い』を表現する手法と捉え」た。さらに落語が「不条理な空間やファンタジーの世界を描くことに優れている」と見定め、師匠に談笑を選ぶのだ。
著者は前座から二つ目を1年半で通過している。異例なことで、それを支えたのは師匠の談笑だ。二つ目になり、著者が「擬古典(ぎこてん)」なる落語を始めた時、客のみならず、楽屋も瞠目した。そして快進撃なのである。
本書には落語初心者はもちろん、見巧者や同業者が唸る視点があり、示唆にあふれている。談志は現代落語論を「落語が『能』と同じ道をたどりそうなのは、たしかである」と結んだが、著者は終章において、落語の持つ伝統性は強固だとしつつも、こう言っている。「落語が『漫才』と同じ道をたどりそうなのは、たしかである」と。
かつて漫才も徒弟制であったが、それは吉本が設立した養成所NSC、その1期生がダウンタウンであったことによって崩れた。著者は落語界のリスクをそう表現したのだ。
書かれていないことを少し。本書は暮に出版されたが、すでに増刷となっている。そして著者には弟子が来た。二つ目は弟子が取れないので、友達になったそうである。