【聞きたい。】長谷川ひろしさん 『崩壊 朝日新聞』

インタビュー

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崩壊朝日新聞

『崩壊朝日新聞』

著者
長谷川 煕 [著]
出版社
ワック
ISBN
9784898314432
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】長谷川ひろしさん 『崩壊 朝日新聞』

[文] 篠原知存(産経新聞 文化部編集委員)

hasegawa
長谷川ひろしさん

■商業新聞こそ本来の姿

 「あの日驚いたのは、読者に対する謝罪がなかったこと。それでわたくしは内心、激怒したんですね」

 平成26年8月5日。朝日新聞の朝刊に、日本統治下の朝鮮で官憲が若い女性を強制連行して従軍慰安婦にしたという、いわゆる吉田証言にまつわる一連の記事を取り消すという趣旨の記事が載った。朝日新聞OBで、関連会社が出版する週刊誌「アエラ」に取材と執筆をしていた著者はこれを読んで、社との決別を決意したと話す。

 「社長に『どういうことだ』と聞きに行こうかとも思いました。でも、記者は何かを大声で叫ぶ人間ではなくて、報じる価値があると感じたことを取材して書くのが商売。ああいう紙面を作ってしまうメディアの構造について、きちんと書くべきだと。それで縁を切ることにしました」

 フリーの立場だが、アエラ創刊時からの最古参だったこともあり、定年後も編集部の机と電話を使っていたという。それを返上して社員やOBの話を聞き、過去の資料を集めた。なぜ間違えたのか、なぜ不十分な記事が出てしまったか、社風はどうやって形成されたのか…。取材は徹底的だ。たとえば元社長の中江利忠氏からは、こんな言葉を引き出している。

 〈下から地道に事実を積み上げるのではなく、上から観念的、教条的に物事を決めつける。これが朝日の伝統の中に過剰にあったことは否定できない〉

 タイトルは過激だし、手厳しい言葉もでてくるが、単なるバッシングとはひと味違う。ジャーナリズム論として面白いし、同じ業界の末端に身を置く身としては、大先輩である筆者の悲嘆が胸に刺さりもする。

 「商業新聞こそ、報道、言論のまっとうなあり方だと思っています。読者が知りたいこと、面白いことを満遍なく紙面に反映する。それが新聞のあるべき姿。特定の主義主張や思想に基づく記事は必要ありません」(ワック・1600円+税)

 篠原知存

【プロフィル】長谷川●

 はせがわ・ひろし 昭和8年、東京生まれ。慶応大卒。36年、朝日新聞社に入社。週刊誌「アエラ」などを経て、現在はフリーのジャーナリスト。
●=熈のノを取り、巳が己

産経新聞
2016年3月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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