<東北の本棚>枠に収まらない多様性

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石ノ森章太郎論

『石ノ森章太郎論』

著者
山田 夏樹 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784787292391
発売日
2016/11/19
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>枠に収まらない多様性

[レビュアー] 河北新報

 登米市出身の漫画家石ノ森章太郎(1938~98年)の数々の作品について、世界観や誕生の背景、マンガ史における位置付けを、石ノ森ファンの著者が読み解いた。
 初期から代表作の「サイボーグ009」までの時期を「成熟」と位置付ける。以後「凋落(ちょうらく)」に転じたとする一部の評価には批判的考察を加えた。漫画家の枠に収まらない石ノ森の多様性が浮かび上がってくる。
 009は64年7月に連載が始まった。石ノ森はその6年前に「唯一の読者」と慕った実姉を亡くし、引退を決意。旅行中に読んだ雑誌にヒントを得て、構想を練り始めたという逸話を紹介。石ノ森の再生、成長の帰結として誕生したと位置付ける。
 仲間9人が人造サイボーグゆえの苦悩や悲哀を描いた009。悲劇のヒーローとして主人公たちを際立たせたことにより、長年にわたって読者に受け入れられたと分析した。手塚治虫の「鉄腕アトム」など従前の作品に見られた「創る者/創られる者」という枠組みを解体する試みだとする。
 実写テレビの原作となった「仮面ライダー」は放映当時に多くの子ども向け雑誌を生んだ。「メディアミックスの展開により石ノ森が生んだ新しい表現が定着し、可能性を拡大させていった」と当時を評した。
 「HOTEL」や「マンガ 日本経済入門」など後期の作品については、「総体としてマンガという表現方式が豊穣(ほうじょう)になることを目指していく姿勢」を読み取った。
 手塚治虫との比較や、他の漫画家との鼎談(ていだん)を随所に織り交ぜ、石ノ森の個性を浮き彫りにした。著者は1978年東京都生まれ。立教大大学院博士課程後期課程単位修得退学。法政大文学部日本文学科助教。
 青弓社=03(3265)8548=2160円。

河北新報
2017年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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