私がストーカー警察小説を書いた動機――『SCS ストーカー犯罪対策室 上』刊行エッセイ 五十嵐貴久
エッセイ
『SCS ストーカー犯罪対策室 上』
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私がストーカー警察小説を書いた動機――『SCS ストーカー犯罪対策室 上』刊行エッセイ 五十嵐貴久
[レビュアー] 五十嵐貴久
たまたまですが、今朝のニュースで某アイドルグループのメンバーが、自分たちのサイトへ「殺害予告があった」と記者会見を開いていました。どこからがストーカーで、どこまでがストーカーじゃないかというのは、見極めが困難でしょうけれども、この事件は明らかなストーカー犯罪に分類されてしかるべきかと思います。
私はデビュー作が「リカ」というモンスター化した女性ストーカーを主人公とした小説だったため、ずっとストーカーという犯罪に興味がありました。犯人の側に「自分が悪いことをしている」という意識のない犯罪として、最強のものでしょうし、結果として殺人にまで発展することもあります。小説のテーマとして、一考に値するのは言うまでもないでしょう。
重要なのは、人間は誰しもがストーカーになる可能性を内包している、ということです。好意を伝えることは決して悪ではありません。それが悪なら、誰も恋愛ができなくなります。
問題は好意の押し付けが過度であった場合ですが、どこまでなら適正で、どこからが過度なのか。そこには個人差があります。明確な線引きができないのです。
SNSの進歩により、昔と比べて人間はさまざまな方法でコミュニケーションを取ることが出来るようになりました。その分、ストーキングについてもさまざまな解釈が可能です。毎日メールを送ったら、それはストーキングでしょうか? 一日一通ぐらいはいいのか。では二通は? 五通は? 十通は? 毎日電話をかけたら、それは犯罪なのか?
それが今回の『SCS ストーカー犯罪対策室』を書いた動機です。作中、さまざまなストーカー犯罪のパターンを事件として描き、更に主人公の女性刑事もストーキングされている、という設定を盛り込みました。出来るだけリアルな数字も入れ込み、現実に起こり得るストーカー犯罪の恐怖を描いたつもりです。ぜひご一読ください。