『発掘狂騒史』
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戦後日本の考古学における光と闇
[レビュアー] 図書新聞
皇国史観が崩壊した戦後、ようやく日本人のルーツを探る考古学という学問は注目を集めるようになった。そんな戦後日本の考古学における光と闇を描いたノンフィクション作品(『石の虚塔――発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』改題)。売らんかな主義であれば、「神の手」藤村新一から書き起こすはずだ。しかし本書は、解説の増田俊也が指摘するように、その手法は取らない。考古学界のヒーローである相澤忠洋、芹沢長介らによる発見や論争を、編年体で追跡。とにかく出来事の隙間を埋め尽くす稠密な書き込みに圧倒されるだろう。そしていつしか読者は考古学が有する熱狂の渦に巻き込まれ、理解する。藤村新一が登場するためのプレリュードは、戦後直後から既に鳴り響いていたことを。(2・1刊、三六六頁・本体五九〇円・新潮文庫)