『アニマルバスと わすれもの』
- 著者
- こてら しほ [著]/こてら しほ [イラスト]/株式会社クーリア [企画・原案]
- 出版社
- ポプラ社
- ジャンル
- 文学/日本文学、小説・物語
- ISBN
- 9784591154717
- 発売日
- 2017/07/20
- 価格
- 1,320円(税込)
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パンダがバスに!? 人気絵本『アニマルバスと わすれもの』誕生のひみつ
[文] ポプラ社編集部
7月に発売になった絵本『アニマルバスと わすれもの』が、ひそかな旋風を巻き起こしています!
「しずくちゃん」や「おじぱん」を生み出した株式会社クーリアによって制作され、ショートアニメにもなったキャラクター「ゆかいなアニマルバス」の、はじめての絵本。
動物でもあり乗りものでもある、そんなふしぎなキャラクターが生まれた背景や、絵本の見どころを、作者のこてらしほさんに伺いました。
***
――まずはじめに、「アニマルバス」というキャラクターが生まれたきっかけを教えてください。
私はクーリアという会社でデザイナーをしているのですが、2014年ごろ、社内の全デザイナーから新しいキャラクターを募集するプロジェクトがありました。その時にいろいろと出した案のひとつが、「はたらくぱんだ パンダバス」でした。
もともと大きくてぽよーんとしたゆるいキャラクターが好みで、バスや電車などの乗り物に乗ってぼーっとすることも好きだったんです。それで、この2つがゆるーく組み合わさったらなんだかすてきになるかも?と思い、パンダとバスが組み合わさったキャラクターを描いてみました。
このパンダバスのデザインが運よく社長の目に留まって、「動物」も「バス」も小さい子が好きなものだから、子ども向けのキャラクターに仕上げたら面白いんじゃないかということで、ブラッシュアップを始めました。また、ほかの動物もバスにできるのでは、というアドバイスもあり、カラーバリエーションを意識してさらにクマバスやウサバス、カバス、ヒョウバス……とつくっていきました。
――最初からたくさんの動物がいたわけではなかったんですね。
実はそうなんです。最初はただの「パンダバス」の絵だけだったので、今の状態に辿り着くまでには決めることがいっぱいあって……。
パンダ以外のバスもできたので全体のタイトルが必要だな、とか、どういうところで働くのかな、とか、バスたちそれぞれの名前はどういうのがいいかな、とか、バスなんだから乗客が必要だけど、同じ動物でいいのかな、とか。
いろいろと周りの人の意見を聞きながら、少しずつデザインを直したり設定を作り込んだりして、アニマルバスの世界をつくっていきました。
採用されなかったバスのデザインも結構あるので、それも絵本のどこかでさりげなーく登場させたいな、と思っています。
――たくさんのキャラクターたちが生まれたわけですが、こてらさんのいちばんすきなキャラクターはだれですか? またその理由も教えてください
うーん、いちばんを絞るのはなかなか心苦しいですね……! どのキャラクターにもそれぞれ思い入れがあるので。一応パンダバスのファンファンが主人公ではあるのですが、私の中では群像劇みたいなものだと思っているんです。特にバスたちは、本当はどの子も主人公扱いしたいのですが……。それでも強いて言うなら、やっぱり最初にきっかけを作ってくれたファンファンでしょうか!
――運転士の存在が絶妙! という声がよく聞こえてくるのですが、彼らはあくまで運転手であり、キャラクターとしての主体はバスそのものにあるんですよね?
そうですね。私も、これはどうなってるんですかとよく突っ込まれるのですが、主体はバス本体のほうで、操縦されて動いているわけではないんです。それは最初からはっきりしていました。
実はまだ解明されていない秘密も多いんですが、今わかっていることは、彼らはバス本体とは別個の存在として働く「お世話係」だということ。例えるなら、動物園の飼育員さんが乗っているような状態といいますか……。
主体はあくまでバスなんですが、ああいう体なので、体を洗ったりとか、ひとりではできないこともたくさんあるんです。そういったときにお手伝いしてくれるのが、運転士です。絵本の中でもはみがきさせているシーンがありますよね。
一日の中でちょっとずつお世話する仕事があるので、バスたちとは一緒に暮らしているようです。もはや家族同然なので、一応別の意識ではあるんですけど、バスと一緒におどろいたり、喜んだり、一心同体のようなところがありますね。「しゃべらないの?」ともよく聞かれるのですが、声は誰も聞いたことがないみたいです。何か伝えたいときはジェスチャーで伝えているようですよ。
――絵本化するにあたって、こだわったポイントはどこですか?
絵のタッチにはとても気をつかいました。元々のデザインはシンプルで平面的な絵だったんです。
私も幼い頃は絵本が大好きで、小学生になっても幼稚園のときにもらったお気に入りの絵本を繰り返し眺めているような子どもでした。なので、やはり絵本という媒体には少なからぬ思い入れがあるんです。その頃の自分が見ても気に入るものにしたいという気持ちがあったので、実際はパソコンで描いてはいるのですが、絵本らしい、手描きのあたたかみが出るように工夫しました。
それと絵本を製作している途中で、ありがたいことにアニメ化のお話をいただいたのですが、その際に加わった設定も絵本に反映させるようにしました。絵本に登場する「アニマルバスの学校」や「ギアチェンジ」などの設定は、実はアニメ化の際にできたものなんです! 絵本とアニメの両方を見ていただくと、相乗効果でより楽しめるんじゃないかな、と思います。
――実は細かいところの描き込みがとても面白いんですよね!
ありがとうございます! そこもこだわったポイントのひとつです。細かいところがちゃんと描かれていると、描かれている世界に説得力が出て、生き生きしてきますよね。
よく見ていただくと、モブキャラの村人たちにも、ちゃんとモデルがいるんです。動物がモデルになっているものは分かりやすいですが、実は動物じゃないものがモデルになっている人たちも……。ぜひ隅々まで見て、「これはなにがモデルかな?」と推理してみてください。
――今回の絵本の中で、いちばん好きなシーンを教えてください!
ファンファンが走っている商店街の背景がお気に入りです。基本的には動物たちが暮らす世界なので、栄えている場所はきっと動物たちにとって居心地がいいところなんだろうな……と思って、少しサバンナのような、自然が残っているイメージにしました。
このページにもちょこちょこ小ネタを入れているので、ぜひ実物を手に取って細部まで見てもらえるとうれしいです。
――最後に、読者の皆さまに一言お願いします!
アニマルバスの世界は、これからも少しずつ広げていきたいと思っています。
ファンファンたちもまだまだバスとして成長途中で、今も一人前のバスになれるようがんばっているところですので、ぜひ応援してあげてくださいね!