【児童書】『ごちそうの木』ジョン・キラカ作、さくまゆみこ訳
[レビュアー] 産経新聞社
■独特の色遣いでハッピーに
アフリカ・タンザニアの昔話。日照り続きでおなかペコペコの動物たちが、協力して「ごちそう」を食べようと頑張る話だ。
大地の真ん中に、たわわに実がなる大木があった。どうやらこの木、「ントゥングル・メンゲニェ」と唱えれば実を落とすらしい。「びっくりするほど素晴らしいもの」を意味するこの言葉、ゾウやキリンが覚えようとするものの、なぜかつい忘れてしまう。そこで最後に、小さなノウサギが挑戦するのだが…。
作者のキラカさんはタンザニア生まれ。同国は近代化により、大人が子供に昔話を聞かせる口頭伝承の文化が滅びつつある。本書も、キラカさんが村々をめぐり、語り部から伝え聞いた貴重な昔話だという。
動物たちが着ている服や背景はカラフルかつ独特の色遣いで、ハッピーな気持ちになれそう。筋書きなどにツッコミどころもあるが、作品全体がおおらかな世界観に包まれており、読んでいて心地よい。人気アニメになぞらえ、アフリカ版「けものフレンズ」といえるかも?(西村書店・1500円+税)
本間英士