【聞きたい。】渡辺直樹さん『地域人』 編集者の「血が騒ぐ」異色雑誌

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地域人 第26号

『地域人 第26号』

著者
大正大学地域構想研究所 [著]
出版社
大正大学出版会
ISBN
9784909099099
発売日
2017/10/10
価格
1,100円(税込)

【聞きたい。】渡辺直樹さん『地域人』 編集者の「血が騒ぐ」異色雑誌

[文] 本間英士


渡辺直樹さん

 「地域人」はタイトル通り、各地の話題や、まちおこしに奮闘する人たちを特集する月刊誌。平成27年9月の創刊以来、編集長を務めている渡辺直樹さんは、かつての敏腕編集者だ。

 「最初は関わる予定ではなかったんです。ただ、編集長の打診を受けたときには、血が騒ぎましたね」。こう語り、笑顔を見せる。

 1980~90年代、「週刊SPA!」や「週刊アスキー」などの人気週刊誌を手がけ、計7誌の編集長を歴任。その後、大学教授に転身したため約20年のブランクはあったが、企画に携わった漫画「孤独のグルメ」原作者、久住昌之さんのインタビューを掲載するなど、「これまでの経験が生きている」と話す。

 同誌は大正大学の「地域創生学部」新設に合わせて創刊。最大の強みは、全国59市町村・12地域との連携だ。単なる観光情報の紹介にとどまらず、現場のリアルな問題点を元にした「政策提言」を行うことができる。大学の授業や、自治体の人材育成にも使えるテキストになっている。

 とはいえ、「読んでいて面白い雑誌」を作ることも忘れない。これまでに「北前船が運んだ日本海の食文化」など、興味深い切り口のテーマを取り上げた。「なぜ地域おこしに失敗したのか」など、問題の本質に切り込むことも多い。

 「僕はもともと雑誌が好き。作るからには、面白いものを作りたいんです」

 一部書店やインターネットなどで販売しており、現在の部数は1万部超。最新号では「日本の未来を明るくする女性たち」を特集するなど、取り上げるテーマは多岐にわたる。今後はSNS(会員制交流サイト)を活用した「地域の生の声」の発信を狙っている。

 「東京の政治を見ていると気持ちがめいってきますが、地方を見ると明るい兆しが出ています。とくに女性や20~30代の若者が元気ですね。接していると、『日本の未来は思っているより悪くない』と思えるんですよ」(大正大学出版会・1000円+税)

 本間英士

  ◇

【プロフィル】渡辺直樹

 わたなべ・なおき 昭和26年、東京都生まれ。東大卒。「週刊SPA!」編集長や大正大教授などを経て、現在は同大客員教授。

産経新聞
2017年10月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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