上下巻で4000円でも格安、『新しい人体の教科書』

レビュー

4
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カラー図解 新しい人体の教科書 上

『カラー図解 新しい人体の教科書 上』

著者
山科 正平 [著]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784065020135
発売日
2017/04/19
価格
1,814円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

上下巻で4000円でも、これは格安だ

[レビュアー] 小飼弾

 山科正平の『新しい人体の教科書』を手に取った人の驚きは、ふた通りに分かれるのではないか。「新書なのに合計840ページもある!」vs「教科書でフルカラーなのに4000円を切る?」。筆者は当然後者である。

 筆者は米国の大学でpre-med(医学部予科)の単位を履修したのだが、30年前の物価でも教科書代は一桁高かった。それも中古で。

 では同書は医学部の教科書として使えるのだろうか? おそらく無理であろう。内容が不足しているからではない。英語表記をバッサリ切っているからだ。しかし、これこそが本書の価格破壊を可能にした最大の要因なのではないか。

 医学英語は実は英語ではない。日本語では患者も医者も「脳」と呼ぶ器官は英語で“brain”とは限らない。「大脳」であれば“cere-brum”、「小脳」であれば“cerebellum”。これらはラテン語であるが、「脳波」になった途端“electroenceph-alogram”とギリシャ語になる。「オレにはわけわからん」ことを英語では“It’s Greek to me”とも表現するが、「わけわからん業界語」を覚えないと医学は学べないのだ。

 医学英語から逃れられない日本の医学生には同情を禁じ得ないが、しかし市井の我々は日本語でおk。日本語で「肝炎」が言えればあとはスマホが“hepatitis”にしてくれる。しかし「肝臓」を“liver”としか知らない人々はなすすべがない。まずは日本語で言えるようにしよう。本書を片手に。

新潮社 週刊新潮
2017年11月9日神帰月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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