児童書 『マンザナの風にのせて』
[レビュアー] 服部素子
■戦争の理不尽描き、戒めに
1942年、米ワシントン州ベインブリッジ島。前年12月、日本軍がハワイの真珠湾にある米軍基地を攻撃。日本と米国は戦争状態になり、この島に住む日系米国人も「強制立ち退き」を強いられる。
史実を背景に、物語は、この島からカリフォルニア州のマンザナ強制収容所に送られた日系人一家の末娘・マナミと、祖父の愛犬トモを軸に展開する。
戦争で家も財産も、自由も奪われる理不尽。大人は従っても、米国で生まれ育った10歳のマナミには到底、我慢できることではなかった。その結果、マナミの取った行動が、祖父に大きな悲しみをもたらし、マナミ自身を追い詰める-。
著者は74年生まれだが、子供時代をマンザナ収容所跡の近くで過ごしたことから、「この収容所のことを書き残し、二度と戦争を繰り返さない戒めにしたかった」と、訳者の若林千鶴さんに伝えたという。
トモへの思いに苦しみながら、生きることの勇気を取り戻すマナミの姿に、未来への希望が託されている。(ロイス・セパバーン著、若林千鶴訳、ひだかのり子絵/文研出版・1500円+税)
服部素子