会社に頼らない「インディペンデントな生き方」を実現するために知っておきたい考え方

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インディペンデントな働き方

『インディペンデントな働き方』

著者
藤井 孝一 [著]
出版社
三笠書房
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784837927570
発売日
2018/12/07
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

会社に頼らない「インディペンデントな生き方」を実現するために知っておきたい考え方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

インディペンデントな働き方: 「サラリーマンの呪縛」を解き放つ、7つの人生戦略』(藤井孝一著、三笠書房)のテーマは「会社や組織に頼らない『インディペンデントな働き方』を実現する」こと。

著者は経営コンサルタントという立場から、そのための手段や方法を紹介しているわけです。

精神的にも経済的にも周囲に依存しない生き方ーーそれを実現するには“サラリーマンの呪縛”から解き放たれなければなりません。(「はじめに」より)

核になっているのは、こうした考え方。

「学校を卒業し、会社に就職して定年まで勤め上げ、その後は年金をもらって悠々自適に暮らす」という時代が終わり、これから訪れる「人生100年時代」には、誰もがどこかで独立して働くことを経験することになるはず。

だからこそ、発想の転換が必要だというのです。

つまり、私たちは学校を卒業して社会に出たように、いずれ「会社勤め」も卒業し、自力で生きていくことになるのです。

ただし、この「会社からの卒業」を、ネガティブにとらえるべきではありません。私は「人生の第二創業」と、ポジティブにとらえるべきだと思います。 第二創業とは、本来は経済用語で、古い業種や業態の会社が、新しい環境に合わせて事業の刷新を図り、それまでとはまったく違う分野に進出し、再起を図ることです。(中略)

同じことを人生でも行うべきだと思うのです。あなたには、まだ時間が膨大にあります。この時間を使えばなんでもできるはずです。(中略)

そして、「人生の第二創業」は、スタートが早ければ早いほどチャンスが広がります。だから「いますぐ」動きはじめていただきたいのです。(「はじめに」より)

きょうは3章「“サラリーマン根性”からの脱却法」から、いくつかのポイントを抜き出してみることにします。

10年あれば、必ずなにかの「専門家」になれる

著者は本書において、「10年後のありたい姿を考える」、すなわち「未来の自分を思い描く」ことの重要性を説いています。しかし、なかにはそれを躊躇する人がいるのも事実。

「いまの自分の収入さえ維持できていないかもしれない」「ただ10年分、年老いているかもしれない」などと考えると、気が滅入ってくることもありうるからです。つまりそういう人は、幻滅することを恐れているということ。

しかし本来、「10年後のありたい姿」を想像することの目的は、「いまの生き方」を変えることであるはず。もし10年後の自分を想像した結果、気が滅入るような自分の姿が思い浮かんだのなら、そうならないように、いまから生き方を変えればいいということです。

未来は変えられます。そして何度もいいますが、10年あれば、なんでもできます。少なくとも何かの専門家になれます。

一方、何もしなければ、10年後のあなたは、ただ年齢が10歳加算され、体力も落ち、思考も鈍りはじめているだけの人間になります。(75ページより)

だからこそ、10年後に「ありたい姿」になっているために必要なことがなんなのか、真剣に考えておくべきだということです。(75ページより)

「昔、自分が好きだったこと」を思い出す

著者は自身が主催するワークショップを訪れる人たちにも、10年後の「ありたい姿」を想像してもらっているのだそうです。とはいえ、いきなり「10年後の自分はどうなっていたいか」などと問いかけられても、戸惑ってしまう人がほとんど。

そこで、「過去の自分」を紙に書き出してみることを勧めているのだといいます。なぜなら未来は、過去の延長線上にあるから。

たとえば、「高校生のころ、自分は趣味で小説を書いていた」「大学生になって演劇サークルに入った。台本を書くのが楽しかった」というように、時系列で自分のヒストリーと、そのときに抱いた感情(「楽しかった」「うれしかった」「つらかった」「苦しかった」など)を書いてみるのです。

すると、「ああ、自分は物語を考えたり書いたりするのが好きだったのに、いつの間にかやめてしまっていたな」なんて気づきがあったりします。

また、「去年はこうだった」「おととしはこうだった」と直近の1年、2年を振り返るだけでも、直後の1年、2年でどんな自分になっているか、どんな自分になっていたいかがぼんやりと見えてきます。(76~77ページより)

未来を創造することは難しくても、過去に起きたことであれば書き出しやすいはず。

そして書いているうちに「そういえばこんなことがやりたい」「10年あればできるな」と、さまざまな思いが浮かんでくるものだというのです。(76ページより)

“真面目”なだけでは、いつか後悔する

かつて「週末起業」は、サラリーマンとしては不真面目の極みとみなされました。ときには会社の就業規則に違反してまで起業し、副収入を確保しようという活動だからです。

ただし、これから先、週末起業は決して「不真面目の極み」ではなく、「日本のサラリーマンがみな目指すべき理想の姿」になると著者は予測しています。

これまでの価値観に縛られて「真面目」にやっていたら、損をする。後悔する。「不真面目」な人間に出し抜かれるーー。

そういう時代に入ったのです。 「働き方改革」が叫ばれているいま、発想の転換が必要です。(80ページより)

週末起業を考えながらも、なかなか一歩を踏み出せない人のなかには、「週末起業のような“不真面目”なことはあまりやりたくない」というメッセージを言外に出している人が多いのだそうです。

ところが話をよく聞いてみると、結局は「『真面目さ』を、自分が変わらないことに対する言い訳にしているにすぎない」と著者は感じるのだといいます。

そういう人がいう「真面目」は、「いままでやってきたことを、実直に、これからもコツコツと続けること」。サラリーマンでいえば、「会社に貢献する」「上司の指示に従う」というようなこと。

しかし、そうした考え方を変える時期が訪れているわけです。(79ページより)

もっと羽目を外していい

もしも、いままでどおりに変わらない生活を送ることを「真面目」、時代の変化に合わせて自身の価値観や行動を変えることを「不真面目」と考えているなら、その考えは改めるべきだと著者は主張しています。不真面目でいいのだと。

たしかに、かつての日本は労働時間を顧みず、勤勉にコツコツと目の前の仕事をていねいに遂行することを武器として、世界の製造業を席巻しました。

しかし時代の変化とともにホワイトカラーの生産性の低さが露呈し、日本のサラリーマンのかつての強みは弱みに変わってしまっています。時が経てば、価値観も変わるというわけです。

そこで著者は、もし「不真面目」に慣れていないのであれば、小さな羽目を外すところからはじめてみてはどうかと提案しています。たとえば、まだ明るいうちからお酒を飲むなどの「小さな悪いこと」が視野を広げるというのです。

昼から飲める居酒屋に入ってみると、午後も早いうちから、意外とにぎわっていることに驚きます。働き盛りの30代、40代に見える人もたくさんいて、「この人たちはいったい、何をしてお金を稼いでいる人なんだろう」という素朴な疑問も湧いてくるし、興味が湧いてきます。 でも彼らにしてみれば、それが普通なのです。(87ページより)

「真面目」の定義は、自分の置かれた環境でのみ通用するものだということ。その環境から一歩踏み出したとしたら、そこには「真面目」も「不真面目」もないわけです。(86ページより)

「サラリーマン」はいくつもある生き方のひとつにすぎない

週末起業家の多くは、安定志向の人たちからの理解を得られなくとも、いきいきしているものだと著者。そして、ある程度軌道に乗ってくると、サラリーマンとして働いているときが「仮の姿」となっていくのだそうです。

別な表現を用いるなら、サラリーマンが「いくつもある生き方のうちのひとつ」だと割り切れるようになるということ。すると必然的に、「世間」や「義理」に流されなくなるわけです。

とはいっても、「世間の目が気になること」そのものを否定する必要もないといいます。それどころか、世間の目が気になると思いはじめたということは、脱皮のチャンスでもあるというのです。

なぜならそれは、自分の価値観が、世間の一般的な価値観とは違うということに気づきはじめたということだから。

なんとなく世間とのズレを感じながらも、前向きな意欲を止めることができない。心がざわついて、さざ波を感じる時期。それは、「インディペンデントな生き方」の実現に向け、必要な時間でもあるというのです。(93ページより)

著者は、30代で会社を辞めて独立した経験を持つ人物。会社を辞めたとき、心を苦しめてきたことのすべてが、あたかも憑き物が落ちるかのように「どうでもいいもの」になったのだそうです。

いいかえれば多くのビジネスパーソンは、「どうでもいい」もののためにストレスを抱えたり、自分を犠牲にしたりしているのかもしれないということ。そんな思いがあるからこそ、読者にも行動することを勧めているわけです。

独立さえすればすべてが解決するわけではなく、越えるべきハードルも少なくはないでしょう。しかし実際にどう動くにしても、本書はなんらかの気づきを与えてくれるのではないかと思います。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2019年1月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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