何が行われているのか? 身元隠匿“ネット世界の暗部”を紹介

レビュー

22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

完全に身元を隠せるネット世界の暗部

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 本書によれば、グーグルの検索エンジンがクロールできる領域は、今ではインターネット全体の4%に過ぎないという。これを表層ウェブ、残りの領域をディープウェブと呼ぶ。では、ダークウェブとはなにか。専用のソフトウェアがあればだれでもアクセスできるが、身元が隠匿されるのが大きく異なる点だ。

 まず、暗号通信とはなにか、という技術の点から、読者にこの世界を紹介する。「ネットは匿名ではない」と、主にSNS炎上などの文脈で語られるが、真に匿名性が保たれる空間は、存在しているという。思想を持って発達した“文化”だ。そこでは一体、何が行われているのか?

 例えば、殺人請負サイト。例えば、ペドファイルコミュニティ。発展途上国での児童買春ツアーが、そのままウェブに移行した形の「サイバー・セックス・ツーリズム」から、ヌード写真を共有し合うコミュニティ、ハードコアポルノ製造を強要したユーザー、などなど。元はペドファイルではない人間も、その欲望が反社会的だからこそ、ダークウェブの中でコミュニティを形成する意義を持つという人物も登場する。また、日本の同様の事例を引き、日本の「思想」の欠如を指摘する。アングラでサブカルであっても、それは趣味で、思想ではない。

 アメリカのダークウェブの重要なキーワードに「独立」がある。筆者はそれをアメリカ建国の思想と結ぶが、非常に納得した。まずアメリカ西海岸的思想を理解してこそ、ダークウェブ界の思想を掴むことができる。

 後半、読み進めるほどに、雪崩のようにダークウェブ世界が混入してくる感覚を覚える。ウェブは現実世界の延長であるが、与える作用は異なる。ネットでの「異常でやばい人」という褒め言葉と共に、かなり前から著者についても耳にしていたが、その全て、それが紙に印刷された書籍で、私が書評をしているという状況が、不思議でならない。

新潮社 週刊新潮
2019年2月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加