『麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ』
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理系の眼で探る和洋中の麺
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
アラブからトルコ、ペルシャを経てインドに至る一帯の料理が大好物で、1日2食はアレでもいいくらいながら、毎日3食とまで胸を張れないのは、あのあたりに麺類がほぼないゆえ。
マレーシアにラクサがある以上、イスラム教が禁じてるわけじゃないだろうし、中央アジアにラグマンがある以上、砂漠がちで茹で水に困るからでもないだろうし、理由は謎のまま。
……なんてデカい話でなくとも、どこのラーメンがクドい、どこの蕎麦が高い、どこのパスタが少ないという近所のいい店わるい店談義やカップ麺の新製品批評でさえ面白くて、何でも語れるのが麺料理です。
だもの、正統正調ド理系のブルーバックス(講談社)から『麺の科学』が登場したことに驚きはなく、アミロースだアミロペクチンだグロブリンだグルテニンだがぞろぞろ出てくる非文科系の麺論は、むしろもっと早く読みたかったほど。
著者の山田昌治は、製粉会社への勤務歴もあればTVのバラエティへの出演もこなす研究者。この新書も化学式が並ぶような難解系ではまるでなく、麺のサイエンスからテクノロジーまで、純・文系のワタシでも引っかかることなくページをめくり続けられる。
実用的な料理書でもあって、個人的に悩み続けてきた“スパゲティを茹でるとき塩はどうするのがベストか問題”にまで、ついに最終解答が得られました。まして蕎麦だ饂飩だを自分で打ってみるようなアナタならもう、座右の書ですぜ。