<東北の本棚>社員、家族への配慮重視
[レビュアー] 河北新報
米沢市のリネンサプライ会社の2代目社長だった著者が、49歳で同業の大手に自社を売却した過程を自ら記録した。企業の合併・買収(M&A)のノウハウを紹介する本ではなく、会社を売った後の第二の人生を見据えて練られた計画の遂行過程がハイライトだ。
例えば、円満に会社を売却し、地方での人間関係を維持していくために気を配ったのが社員の気持ちと、会社に対する風評が立たないようにすることだった。工場環境の改善や福利厚生の充実をM&Aとセットにし、社員の動揺を最小限にとどめた。
家族への配慮も重要になるという。地方の中小企業経営者は、地元の名士であることが多い。おのずと妻らも交友が広くなる。会社売却の理由を家族が納得するまで説明し、売却後の歩み方を一緒に計画しておくことの大切さを重ねて指摘している。
著者は1953年米沢市生まれ。旅行会社を経て、84年に社員50人のリネンサプライ会社に入った。無借金経営だったが、会社の発展期は過ぎたと判断し2002年に同業社に売却した。同年、研修教育事業などを行う会社を米沢市で新たに設立。10年、同社を仙台市に移転させた。
日本橋出版発行、発売は星雲社03(3868)3275=1540円。