『あのひと』
- 著者
- マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット [著]/谷川俊太郎 [著]
- 出版社
- スタジオジブリ
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784198649616
- 発売日
- 2019/10/09
- 価格
- 2,420円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【児童書】『あのひと』
[レビュアー] 正木利和(産経新聞編集委員)
■愛って何だ?
ひとりであてもなく野山をさまよっている男は、なにを求めているのか。それは、まだ出会ったこともない、「あのひと」。
彼は、いのちのままに生きている、とつぶやく。木を切って釣りざおをつくり、魚を釣る。火をおこし、暖をとる。そうやっているうちに、だれかが突然、自分の名を呼んだ。
その声は女になった。それが、「あのひと」だった。ところが、「あのひと」は彼の前からまるで幻のように一瞬で走り去っていった。
しかし、彼の心の中にはおもかげが残った。そのおもかげをたよりに、男はまた岡を越え、谷をさすらいながら「あのひと」を追いかけていった…。
愛って何だ?
その問いに対する詩人、谷川俊太郎の答えが、本書に簡潔な物語として描かれている。ちょっと聖書のなかのアダムとイブを思わせもするが、アニメーション作家ヴィットによる挿絵のおかげで、説教臭が消え、すがすがしいストーリーに仕上がった。(マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット構成・絵 谷川俊太郎・詩/徳間書店・2200円+税)
正木利和