『レスキューナースが教えるプチプラ防災』
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【聞きたい。】辻直美さん 『レスキューナースが教える プチプラ防災』
[文] 平沢裕子
■命を守る対策を日常に
著者は、国内外の災害現場で被災者の救命活動にあたる国際災害レスキューナース。平成23年の東日本大震災や昨年の台風被害の現場でも被災者、被災地と向き合ってきた。本書の出版は、自然災害が多発している日本で、人々の防災への関心が低い現状を何とかしたいと考えたためだ。
「自治体などで防災講座を開いても人が集まらない。防災ネタは人気がないんです。災害に備えることで被害を最小限にとどめ、命を守ることができるのに。日本全体が今のままの防災意識ではまずいとずっと思っていました」
祖母、母とも看護師で、中学時代に盲腸で入院したとき、てきぱきと働く母の姿を見て看護師の仕事に興味を持つ。高校の先生に勧められ大学医学部も受験、合格したが、「医師は病気を診る仕事。私は人を診る看護師がいい」と、看護の専門学校へ進んだ。
7年の阪神・淡路大震災と30年の大阪北部地震で2度被災。実体験を踏まえた防災対策は、引き戸の取っ手にS字フックをかける▽玄関、廊下に物は置かない▽本や食器の滑り止め防止に100円均一の滑り止めシートを使う-など、お金をかけずにできるシンプルなものばかり。ペットボトルや新聞紙など身の回りにあるもので工夫する方法も紹介。防災食も日頃から食べているパスタなどの麺類やパスタソースの利用を推奨する。
いつ、どこで被災しても大丈夫なように、コンパスや防災笛、ソーラーライト、ナイフ、塩飴など「命を守るアイテム」はいつも持ち歩く。「大事なのは防災を日常にすること。なぜなら、災害はいつくるか分からないから。特別なものとせず、普段から家にあるものでなんとかするという発想を持ってほしい」
防災対策と、被災後に生き延びるための知恵が詰まった本書。すべて実践するのは難しいかもしれないが、読んで知識を得るだけでも命を守ることにつながりそうだ。(扶桑社・1200円+税)
平沢裕子
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【プロフィル】辻直美
つじ・なおみ 昭和45年、大阪市生まれ。看護師歴28年、災害レスキューナースとしては25年活動。一般社団法人育母塾代表理事も務める。