【聞きたい。】宮島渉さん 『弁護士のすゝめ』
[レビュアー] 平沢裕子
■「最強の資格、自由に働ける」
福沢諭吉の代表作「学問のすゝめ」になぞらえ、弁護士になることを強く勧めたいとの思いをタイトルに込めた。とはいえ、簡単になれるものではない。お金と時間をかけ苦労して司法試験に合格しても就職難で稼げない、と思っている人は少なくない。
「食えないというのは、法曹人口増員に反対する人たちが約10年前に広めたものだが、事実ではない。今はあちらこちらで弁護士不足が叫ばれ、司法試験に合格すれば売り手市場。合格率も4割を超え、今、弁護士になる最大のチャンス」
近年、社会全体のコンプライアンス意識が高まっていることもあり、企業や自治体の法務需要が増加、弁護士の活躍の場は広がっている。一方、弁護士を目指す人は減少。司法試験合格率4割超は、裏を返せば法科大学院の志願者が減り、司法試験の受験者が減っているためでもある。本書では最前線で働く若手弁護士の活躍ぶりも紹介し、法廷業務にとどまらず、さまざまなフィールドで活躍できる可能性を伝えている。
「登録さえすれば税理士や司法書士など他の士業の業務もできる最強の資格。女性は今2割だが、自立して自由に働けて子育てとの両立が可能な職業であることも知ってもらえれば」
世界では、弁護士の資格を持つ人が政治、経済、外交などの分野でリーダーになったり、参謀として戦略策定を担ったりしている。例えば米国では、バイデン大統領をはじめ大統領経験者の6割が弁護士出身だ。
主要国の中で弁護士が桁違いに少ない日本では、政府や大企業の中枢で戦略を担う弁護士がほとんどおらず、経済力や国力の低下を招いているとの見方を示す。
「弁護士をもっと増やさないと日本の未来はない。好奇心があり、この世界をよくしたいと願う人は、ぜひ挑戦してほしい」(民事法研究会・1540円)
平沢裕子
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【プロフィル】宮島渉
みやじま・わたる 弁護士。昭和49年、福島県郡山市生まれ。司法書士として働きながら夜間の法科大学院に通い、36歳で司法試験に合格。「ロースクールと法曹の未来を創る会」事務局長。本書は同会事務局次長の多田猛氏との共著。