高校生の主人公たちが愛しい! 青春ミステリシリーズ3選

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  • 巴里マカロンの謎
  • 午前零時のサンドリヨン
  • 理由あって冬に出る

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大人気“小市民シリーズ”の最新刊 11年ぶりの謎4篇はワクワク感満載

[レビュアー] 瀧井朝世(ライター)

 優れた推理能力を持つものの、中学生時代の苦い経験から、小市民として慎ましく振る舞うことを心掛ける高校生の小鳩君と、彼と互恵関係にある小佐内さん。しかし、二人はなにかと謎に遭遇してしまう。絶大な人気を誇る米澤穂信の“小市民シリーズ”、じつに十一年ぶりの最新刊が登場。『巴里マカロンの謎』は、彼らが高校一年生の頃の秋から冬が舞台の連作集。

 甘いもの好きの小佐内さんに誘われ、新規オープンのマカロンの店を訪れた二人。三種類しか頼んでいないはずが、なぜか小佐内さんの皿には四つのマカロンが。さっそく小鳩君は店に入ってからの状況を振り返り分析を開始する。そんな表題作をはじめ、他校の文化祭での珍事や、新聞部で起きたあげぱんを巡る出来事など、菓子に絡んだ謎四篇を収録。恋人ではなくあくまでも互恵関係の小鳩君と小佐内さんのコンビネーションがなんとも可愛く魅力的。久しぶりのこのワクワク感、すでに続篇が待ち遠しい。

 主人公たちが愛しい青春ミステリといえば、昨年末にミステリランキング三冠を達成した『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』(講談社)の作者、相沢沙呼のデビュー作『午前零時のサンドリヨン』(創元推理文庫)から始まるシリーズも。主人公の須川君は、高校に進学して同級生の酉乃初に一目ぼれ。実は彼女、夜はバー〈サンドリヨン〉で活躍する凄腕のマジシャンだ。推理力にも優れ、マジックの力で人を助けたいと思っている彼女は、須川君が持ち込む校内の謎を鮮やかに解いていく。

「戦力外捜査官」シリーズなどの人気作を持つ似鳥鶏も、学園ミステリでデビューした作家だ。『理由あって冬に出る』(創元推理文庫)は市立高校に通う葉山君が主人公。学校の芸術棟に幽霊が出るとの噂が立って部員たちが怖がるため、吹奏楽部部長が真偽を確かめることに。夜の見張りに葉山君も立ち会うよう頼まれて……。個性的な高校生が多数登場、コミカルだが緻密に作られた日常の謎も魅力。こちらもシリーズ化されている。

新潮社 週刊新潮
2020年2月27日梅見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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