RCサクセションやツービートも “伝説”のプロデューサー回想録

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RCサクセションやツービートも “伝説”のプロデューサー回想録

[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)


『イベント仕掛人が語る「70年代ロック実話」』高橋廣行[著](アイドルジャパンレコード)

 反原発アイドルグループとして一時期話題になった制服向上委員会。「清く正しく美しく」をモットーとする正統派アイドルなのに、なぜ活動がやたらと政治的だったり、頭脳警察や外道、めんたんぴんといった伝説のバンドの人が楽曲提供したりするのかというと、プロデューサーの高橋廣行氏自身が伝説のアングラバンド、ロスト・アラーフや裸のラリーズのドラムだったためだ。

 これは、そんな高橋氏が70年代にロックのイベント仕掛人として活動していた時代のエピソードをまとめた一冊。といっても、BOWWOWの売り出し時に「私の考えた企画は、デビュー・コンサートを日本青年館でやり、アルバイトにチケットを買わせ、即完売にする。その後、追加公演を発表するというプランだった。今でもこの作戦を使っているアーティストや家電、自動車メーカーなどがあるが、日本人は自分で良いか悪いかを判断出来ないので(アホばかり)、新人バンドがいきなり完売となると『何それっ!?』『すげ~』とか言って、観に行きたがる傾向が強い」「日本青年館ではあらかじめ雇ったアルバイトに朝から会場に並んでもらい、その写真をスポーツ紙や音楽誌に送って、プロモーションのために使用してもらった。その企画は的中し、追加公演を行った渋谷公会堂は一般客で満員となった」と、やってることはほぼプロレス仕掛人みたいなものだったりするんだが。

 ロック化したRCサクセション売り出しの話から、なぜかツービートのファンクラブ運営や、伝説のザ・ぼんち武道館公演に、腰から下がないスケボー少年ケニーの来日まで、貴重なエピソード&見たことのないフライヤーが大量に掲載されておりすっかり興奮していたら、「吉田豪に乗せられ『ダッ!ダッ!脱原発の歌』を創り制服向上委員会は競合がいないグループになった」という文章が出てきて、まさかの責任転嫁に驚愕しました。ボクのせいなんだ!

新潮社 週刊新潮
2020年4月23日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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