LGBTQの課題が遅々として進まない理由 支援に携わる代表者が痛感した問題点とは?

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「男女格差後進国」の衝撃

『「男女格差後進国」の衝撃』

著者
治部 れんげ [著]
出版社
小学館
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784098253807
発売日
2020/10/01
価格
990円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

LGBTQの課題が遅々として進まない理由 支援に携わる代表者が痛感した問題点とは?

[レビュアー] 村木真紀(認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表)


村木真紀さん

NPO法人「虹色ダイバーシティ」を立ち上げ、LGBTQが働きやすい職場づくりに取り組んできた村木真紀さんは、性的マイノリティとジェンダー平等の課題は地続きだという。この考察が確信に変わったきっかけが、ジャーナリストの治部れんげさんによる書籍『「男女格差後進国」の衝撃』だ。日本の男女格差が縮小しない理由をデータと実例から検証した本作を読んだ村木さんはどんな思いを抱いたのか?

 ***

 LGBT等の性的マイノリティの社会的課題は、ジェンダー平等の実現なくしては解決しない、と常日頃から考えていたが、その確信をより強めてくれた一冊。著者は「ジェンダーに基づく偏見」は男性にとっても有害だと自らのスタンスを明らかにした上で、日本がどのくらい後進国なのか、データを積み重ねていく。繰り返し強調されるのは、日本も決して前進していないわけではない、だが、他国の変革のスピードが圧倒的であるために、相対的に後進国になっている、ということ。これはLGBTに関してもまったく同じ状況で、大きく頷きながら読んだ。

 私が興味深かったのは、10代の子どもたちがLGBTの話題を通じてジェンダーに興味を持っている、ということ。私は著者と同年代であるが、学齢期にLGBTに関する情報に触れることができず途方にくれた経験があるため、その変化は嬉しい驚きだった。

 一方で、ジェンダー平等とLGBTの課題を比較して、大きく違うと感じたのは、国による法整備と統計データである。法律の裏付けと、男女別の各種統計データがあることで、適切な施策を打つことができる。LGBTの社会課題の解決に向けて、ここが日本は周回遅れだと痛感した。

 次の世代にどんな社会を残したいのか。そのために何ができるのか。本書では、政治分野、経済分野、そして家庭の中でも、ジェンダー平等のためにできることの例が具体的に挙げられている。男らしさ、女らしさを押し付けるより、その子らしさを大事にしたいという親たちの声は、LGBTかもしれない子どもたちも勇気づけてくれるだろう。

 このコロナ禍で、元から社会的に弱い立場に立たされている人がより大きな影響を受けている。それは女性であり、また、LGBTである。女性やLGBTの声を意識的に意思決定の場に入れることが、今、切実に求められている。

小学館
※この記事の内容は掲載当時のものです

小学館

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