住人だから分かるコロナ対策の違い

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コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿

『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』

著者
栗田路子 [著]/プラド夏樹 [著]/田口理穂 [著]/冨久岡 ナヲ [著]/片瀬 ケイ [著]/クローディアー 真理 [著]/田中 ティナ [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784334045166
発売日
2021/01/20
価格
1,144円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

住人だから分かるコロナ対策の違い

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 新型コロナという災害の大きな特徴は、震災などと違って世界同時進行であることだろう。このため他国との比較ができ、対策の良否がはっきり見えてしまう。これは為政者にとって、実に不愉快であるに違いない。

『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(栗田路子他)は、七カ国の首脳がコロナと対峙した一年間の記録だ。各国に住んで同じ空気を吸い、同じ緊迫感を味わっている書き手たちが綴っているだけに、日本からでは部分的にしか見えなかったものが、本書からは伝わってくる。

 一読して印象的なのは、リーダーたちの言葉が持つ力だ。政界の道化師と呼ばれてきた英国のジョンソン首相は、ロックダウン前に国民の団結を促す見事な演説を打(ぶ)って見せた。ドイツのメルケル首相は、オンラインで若者や市民と九〇分にわたって対話する機会を設けている。不安にさいなまれる国民にとって、指導者がこちらを向いていると感じることは、やはり大きな力になるのだ。

 本書の白眉といえるのは、やはり米国の章だろう。コロナの危険を軽視した情報を振りまき、自分に都合のよい専門家ばかり重用したトランプ大統領の行状は目を覆うばかりで、米国の甚大な被害は人災の部分が大きいと思わざるを得ない。

 本書では日本の首相は取り上げられていない。感染者数を比較的低く抑えていながら、コロナ対策の評価が世界最低となったのはなぜか、本書を読んで考えてみてはいかがだろうか。

新潮社 週刊新潮
2021年2月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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