デビュー間もない人気作家の全部盛りエンターテインメント!!

レビュー

3
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競争の番人

『競争の番人』

著者
新川 帆立 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065268148
発売日
2022/05/11
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

デビュー間もない人気作家の全部盛りエンターテインメント!!

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

「××を不当に強制したとして、独禁法違反の疑いで公取委が立入検査」――みたいなニュースを見るたび、「いいぞ、もっとやれ」とか、「え? その程度でアウトなの?」とか無責任に思うわけですが、考えてみると、検査に至るまでに公取委が何をやっているかはよく知らない。

 その知られざる実態をエンターテイニングに描くのが本書『競争の番人』。極秘調査で実情を探るあたりは警察みたいだけど、世間の認知度や捜査の権限では圧倒的に劣る。標的を張り込んでいると、警察官にまで「役所がそんなことするの?」と不審がられる始末。檜舞台の立入検査にしても、間接強制(応じなかった場合に罰則規定がある)なので、どうぞ罰してくださいと先方が検査を拒否したら引き下がるしかない。意外と弱い立場なのである。

 主人公の白熊楓(29歳)からして、警察官になる夢を母親の反対であきらめて公取委に入った“でもしか”審査官。学生時代は空手で鳴らし、“筋肉馬鹿”扱いされることも。そんな彼女が所属するダイロク(審査局第六審査長)に、キャリア組の超エリート、小勝負勉が着任。正反対の二人がタッグを組むことに……。

 というわけで、本書はお仕事小説でありバディものであり捜査ミステリーであり――と全部盛りのエンターテインメント。正義を信じて組織の中でベストを尽くす主人公たちの明朗社会派ドラマでもある。

 二人が担当する案件は、栃木県S市のホテル三社によるカルテル。ウェディング料金釣り上げや下請けいじめの裏では、天沢雲海なる大ボスが糸を引いているらしい。

 ……と、敵も味方もキャラ立ちまくりなのが特徴。そのおかげかどうか、著者のデビュー作『元彼の遺言状』(およびスピンオフ短編集『剣持麗子のワンナイト推理』)に続き、2期連続で月9ドラマ化が決定。杏と坂口健太郎が主役コンビを演じ、7月11日に放送がスタートする。

新潮社 週刊新潮
2022年6月23日早苗月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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