『大切な人を亡くした人の気持ちがわかる本』
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<東北の本棚>一人一人の思いに伴走
[レビュアー] 河北新報
家族や大切な存在を亡くした時、心身にはどんな反応や変化が生じうるのか。当事者の周囲の人々には、どんな態度が求められるのか。喪失体験に伴い生じる感情「グリーフ」への理解を深められる一冊だ。
東北大大学院出身の著者は長年、グリーフのサポートを研究・実践し、東日本大震災発生後は犠牲者の遺族のケアに当たった。分かりやすい文章とイラストでまとめられ、「グリーフの最中にある人でも読みやすいように」という配慮や温かさが随所ににじむ。経験に基づく、著者のグリーフサポートそのものだろう。
身近な人と死別し、不眠や食欲低下など、普段と異なる状態が現れることは「当たり前の変化」と著者は記す。一方、どんな反応が生じるかは100人いれば100通りだとし、周囲が安易に「気持ちは分かる」と発言したりすることの危険性を説く。当人の話をありのままに受け止める「グリーフサポートの基本」は、多くの人が共有していきたい知識だ。
災害や病気、自死、犯罪など、亡くなった状況によって異なる遺族の感情や、親を亡くした子どもへのサポートについても解説。流産や死産を経験した人へのケアの重要性にも言及し、文字通り「100通り」のグリーフのありようを実感させられる。
回復への歩みでは、同じような体験を持つ人同士が思いを話したり聞いたりする「ピアサポート」は有効な対処法の一つだと指摘し、活動団体の情報も紹介している。
大切な人との死別は誰もが直面しうるが、諸外国と比べ日本では「悲しみは『当然のもの』として積極的な手当てが必要な状態と見なされてこなかった」と問題提起する著者。誰もがサポートの担い手でもあり、社会的理解を求める指摘は重い。(春)
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法研03(3562)3611=1980円。