『愛の一家』
- 著者
- アグネス・ザッパー [著]/マルタ・ヴェルシュ [イラスト]/遠山明子 [訳]
- 出版社
- 株式会社 福音館書店
- ジャンル
- 文学/外国文学小説
- ISBN
- 9784834027037
- 発売日
- 2012/01/12
- 価格
- 935円(税込)
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子供たちが真夜中に見た天空のドラマ
[レビュアー] 川本三郎(評論家)
書評子4人がテーマに沿った名著を紹介
今回のテーマは「星座」です
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一等星レグルスを中心に獅子(ライオン)の形をしている星座が獅子座。ギリシャ神話では勇者ヘルクレスに退治された獅子が天にのぼって星になったという。
この星座の名がついた流星群が獅子座流星群で、日本では二〇〇一年に流星雨が観測されたのが記憶に新しい。
児童文学の名作、アグネス・ザッパーの『愛の一家 あるドイツの冬物語』(一九〇七年)にこの流星群が出てくる。
ドイツのある町に住むペフリング家の物語。父親は学校の音楽教師。子供が七人もいるので暮しは楽ではないが仲むつまじい。
十一月の夜に獅子座流星群が見えることを子供たちは知る。めったにないことなのでぜひ見たい。
しかし流れ星が見えるのは夜中なので幼い弟や妹は外に出ることは出来ない。
年長の三人の兄たちだけが夜中に外に出て流星群が現われるのを待つ。
やがて星がひとつ夜空を横切ってゆく。そのあと次々に降るように星が流れては消えてゆく。
奇跡のような天空のドラマに三人は感嘆して見入る。
そのあと大家に、夜中に外出したことを怒られてしまうが、子供たちは遊びに出たのではなく、流星群を見に出たと分かり、許してくれる。
めったに見られない星のショウを大家も見たくなったのだろう。
この小説、戦前から日本でも愛読され、昭和十六年に春原政久監督によって映画化されている。