マーターズ、パッション、手毬唄、X『侵略少女 EXIL girls』著者新刊エッセイ 古野まほろ

エッセイ

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侵略少女

『侵略少女』

著者
古野まほろ [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914912
発売日
2022/10/19
価格
2,860円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

マーターズ、パッション、手毬唄、X『侵略少女 EXIL girls』著者新刊エッセイ 古野まほろ

[レビュアー] 古野まほろ(作家)

 本作品の上梓をもって商業出版の第一線から身を引き、カボチャ作りの隠居となる。その経緯にあっては……主として新型コロナウイルス感染症の罹患後症状ゆえであるが……要旨を紙媒体版のあとがきに綴っている。適宜御参照されたい。

 さて本作品は、私の本格ミステリ連作〈戦う少女本格〉と、うち〈天国三部作〉の、いちおうの完結をなす長編である。

 といって私の主義からして、ひとつの長編はそれぞれ独立した公理系だ。例えば〈天国三部作〉の各々は、世界観を共有するも完全に独立しており、各々の謎解きに他の作品の知識を必要としない。各々一編の完結したミステリである以上、当然のことである(謎解きに無関係な情緒的箇所については、三部作を通読すればよりたのしめるという特性を有し得るが、各々が連作・姉妹編である以上、これも当然のことである)。

 本作品の特徴について述べる。本作品は極めてオーソドックスなロジック本格だ。だが主観的に述べれば、これはガラパゴス化の枢奥と最果てに到達した、総伏線主義に立脚するフーダニット本格である。ゆえに正統と異端、論と情、聖と淫等々が双立する。要は純粋本格にして奇書だ。更に主観的に述べれば、日本本格に対する私の遺言であり最後の答えである。〈天国三部作〉をもって私の本格は完成した。特に「侵略少女」は、本格作家としての私のエッセンスのすべてをTout-en-unにしたSchwanengesangである。これに、例えば本稿タイトルの各作品を、横溝のいう浪漫の衣として着せている。偏愛すべき浪漫の衣なくして古野本格はない。

 なお、〈天国三部作〉のうち「終末」は登場者カテゴリAとA’の物語、「征服」はAの物語、「侵略」はHとAとDの物語である。加えて、「終末」のAは特殊事情によりフルスペックではない(アルファベットの含意にも注目されたい)。

 それでは末尾になったが、忘れ難きMI氏とKU氏にあらんかぎりの感謝を捧げる。私を生んだ最初の読者と、私を支えた最後の読者である。さようなら。ありがとう。

光文社 小説宝石
2022年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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