『自動運転レベル４』
書籍情報：ＪＰＯ出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『自動運転レベル４』樋笠尭士著（学芸出版社）
［レビュアー］ 西成活裕（数理物理学者・東京大教授）
いま世界中で自動運転車の開発が進められており、欧米や日本、中国などで公道実験も盛んに行われている。本格的な社会実装が進んでいる現在、重要になってくるのが法や倫理、そして社会の受容性に関する議論である。本書は日本におけるこうした議論の最先端をまとめたもので、国の自動運転プロジェクトにも携わっている法学者による明快な分析が豊富な事例とともに紹介されている。
法や倫理を考える際の最大の難問がいわゆる「トロッコ問題」である。これは例えば危険回避のため右に避けると１人、左に避けると５人轢（ひ）いてしまうが、避けなければ自分が危ないとしたらどうするか、という究極の問いだ。ドイツでは２０１７年に「こうした状況への対応を自動運転車にプログラムしてはいけない」という方針が示された。つまりこの答えを予（あらかじ）め決めてはいけないのだ。日本でもこれを受けてガイドラインができつつある。昔好きだった米国の特撮ドラマ「ナイトライダー」の世界の実現はまだ難しいかもしれないが、今から皆であらゆる可能性を考え抜いておく必要があるのだ。
-
2023年7月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
