<書評>『半農半X的 これからの生き方 キーワード AtoZ』塩見直紀 著
[レビュアー] 荻原魚雷(エッセイスト)
◆作り手になる喜び
「半農半X的」とは農業+多様なX(天職や使命)を掛け合わせたライフスタイルのこと。著者は三十三歳で郷里・京都府綾部市にUターンし、地方における持続可能な暮らしを模索してきた。本書はそうした新しい働き方や生き方をAからZまでのキーワードとともに紹介している。
「M」の「○○メーカー&モチベーション」の項ではレイモンド・マンゴーのロングセラー『就職しないで生きるには』(晶文社)の話から「自分の仕事を自分で創る」発想の大切さを説く。本を作る、音楽を作る、パンを作る。自分の好きなものを消費するだけではなく、作り手(メーカー)になることも「半農半X」の重要なテーマだ。
おそらく「半X」の部分には何かを作る喜び、試行錯誤する楽しさを知ってほしいという願いがこもっている。農業(的なこと)をしながらクリエーターやアーティストになる。自分だけの「半X」を考え、行動する。新しい感覚を得ることで、未来の見え方も変わってくる。
(農山漁村文化協会・1540円)
1965年生まれ。半農半X研究所代表。
◆もう一冊
『ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方』伊藤洋志著(ちくま文庫)