「こいつ、ちょっと問題ある感じだな」高橋克典が金髪にハイブランドのモード系で現れた遠藤憲一をみて考えを改めた現場

対談・鼎談

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

交錯―警視庁追跡捜査係

『交錯―警視庁追跡捜査係』

著者
堂場瞬一 [著]
出版社
角川春樹事務所
ISBN
9784758434539
発売日
2010/01/01
価格
754円(税込)

堂場瞬一の世界

[文] 角川春樹事務所


遠藤憲一

 警察小説の旗手、堂場瞬一さんの人気シリーズ「警視庁追跡捜査係」の第一作『交錯』が2時間ドラマとして放送され注目を集めた。

 性格も捜査方法もまったく異なる刑事がコンビを組んで未解決事件を追うストーリーが魅力の本作の映像化に出演したのが遠藤憲一さんと高橋克典さんだ。

 現場100回をモットーとする昔気質の沖田役を遠藤さんが、冷静沈着な書類オタクの西川役を高橋さんが演じた。

「ガッツリ組むのは初めて」と語る二人が出演したドラマの雰囲気や意気込みとは?

 ラストカットを撮り終えたばかりの現場で遠藤さんと高橋さん、そして原作者の堂場さんを交えて、ドラマの舞台裏を明かした。

◆堂場瞬一、唯一のバディものに込めた思いとは


堂場瞬一

――まず堂場さんに伺います。「警視庁追跡捜査係」は堂場さんの数ある警察小説シリーズの中で唯一のバディものです。沖田・西川コンビ誕生の背景には、どのようなお考えがあったのでしょうか。

堂場瞬一(以下、堂場):もともとは、おじさん二人がわちゃわちゃしている話をやりたかったんですよ。年を取ると友達との付き合い方って難しくなったりしますよね。でも、会社など組織の同期は違います。退職するまでその関係が続くし、一生引きずることもある。主人公の二人は警察の同期です。同じ場所で年月を重ねてきた二人がどういう関係性を築いているのか。そこを描いてみたいと思って始めました。簡単に言えば、おじさんになってからの友情ってどんなもんなんだろうと。とはいえ、小説の中では、仲が良いんだか悪いんだかよくわからないという二人なので、お互いは友達とは思っていないかもしれませんけど。

――撮影の様子を見学されたそうですが、いかがでしたか?

堂場:撮影の合間にね、遠藤さんと高橋さんが実に楽しそうにされていたんです。その姿が本編でも出ているのなら、すごくわちゃわちゃだろうなと(笑)。

遠藤憲一(以下、遠藤):かっちゃんとは以前共演しているんですが、ここまでガッツリ組むのは初めてなんです。だから最初は仲良いんだかという、まさにその言葉の通りの感じで。でも、最終的に仲良くなるという展開に実際になった。それは面白かったですね。

高橋克典(以下、高橋):そうですね。事前に話し合ったりということはなかったんですが、やりながら、だんだんと二人の関係が出来上がっていった。

遠藤:本当は最初からできたら良かったんだけど。お互い、セリフのこととか、キャラクターをどうするかとかで一杯いっぱいの状態で入っていくんです。で、撮影が始まってから、ここはそういう風にやるんだと相手を見て、そこに合わせていくという感じで。何シーンか撮るうちに、こうしない? ああしない? とディスカッションもするようになったよね。

高橋:その歩み寄り方が、このドラマには結果的に良かったんだろうと思います。セリフもアレンジしてましたよね?

遠藤:台本を読んでますみたいなやりとりになるのが嫌いなんで。お互いにやりとりする上でより自然な感じに、それこそ同期らしい感じになるようにしたいなって。場面が少しでも生き生きしてくるんじゃないかと思ってだからね!

高橋:ええ(笑)。先ほど「かっちゃん」と呼んでいただいたけど、実は初日に「エンちゃん、かっちゃんで行こう」と声を掛けていただいたんです。とはいえ、僕は体育会出身なんで、すぐにはそうできなくて。

遠藤:だってさ、かっちゃん五十歳くらいなのかなって思ってたら、五十八だっていうから。なんだ、俺と大して変わらないじゃんって。ほぼ同期みたいなもんだよ。

高橋:とまぁ、こんな感じでものすごくよくしゃべるんですよ。

遠藤:俺? かっちゃんだってそうじゃん。俺の百倍しゃべるじゃん。よく言うわ!

高橋:現場でもこうなので(笑)。ものすごく笑かしてくれるので、全体が明るくなるんですよ。

遠藤:それ、自分だからね。

高橋:僕はクールなほうなんで。

遠藤:役はね。役だから!

堂場:まさしく、このわちゃわちゃ感ですよ、僕が求めていたのは(笑)。年を取ってからの男同士、同期って微妙なものがあるんです。目指してきたものが異なるはずだから違いが出てくるだろうし、立場も変わってくる。その中で、どういう付き合いができるのか。男にとって永遠のテーマじゃないかと思っているところがあります。僕は一人で仕事をしていますから、登場人物たちに託しているみたいな感じもあるんですよね。

遠藤:ラストシーンの撮影で、お互い想像を超えて吹きまくっちゃったよね。アドリブをぶつけあったんだけど、どっかから道逸れちゃって、変な世界になっちゃった。

高橋:大人になってから、あんなに笑ったの初めてかもしれないですよ。

堂場:そんな笑えるシーンだったかなぁ。僕としてはものすごくシリアスに書いたつもりですけど(笑)。これは事件の話なので、犠牲者がいたり、逮捕される人がいたりと何人かの人生はめちゃくちゃになるわけです。観ている人もちょっと暗い気持ちになってしまうかもしれない。だから、明るく締めてもらえるのはいいですね。

構成:石井美由貴/写真:島袋智子

角川春樹事務所 ランティエ
2023年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

角川春樹事務所

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク