『最後の学徒兵』
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どうやって斬首したのか再現しなさい
[レビュアー] 梯久美子(ノンフィクション作家)
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今回のテーマは「裁判」です
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沖縄戦のさなかの石垣島で、上官に命令されて捕虜の米兵を殺害した田口泰正という学徒兵がいた。
彼は戦後、BC級戦犯として横浜軍事法廷で裁かれ、死刑判決を受ける。森口豁『最後の学徒兵』は、この裁判の詳細を追ったノンフィクションである。
旧軍では上官の命令は絶対だった。だが戦犯裁判では、命令によって捕虜の虐待や殺害を行った者にも厳しい判決が下された。
BC級戦犯裁判は、不正確な調査や証言をもとに弁護も不十分な中で行われたことが知られているが、本書を読むと、被疑者の権利がほとんど顧みられなかったことが改めてわかる。
長期にわたる拘留、外部との接触が絶たれた中での取り調べ……。そして、裁判の進行も理不尽きわまりないものだった。
「さあ田口、この棒を持って、その看守を捕虜に見立てて、どうやって斬首したのか再現しなさい」
田口への事実審理初日、検察官はこう命じた。捕虜の斬首を田口はすでに認めており、これは検察側が被告人の残虐さを強調するパフォーマンスに過ぎなかった。弁護人は馬鹿げていると抗議したが検察官は譲らず、田口は応じるしかなかった。
彼が絞首刑に処されたのは1950年4月。巣鴨プリズンの最後の刑死者の一人だった。この年、東京はすでに復興著しく、「銀座カンカン娘」が大流行していた。戦犯の処刑を報じた新聞は一紙だけで、数行の短いものだった。