『里山─生命の小宇宙─』
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『里山 生命の小宇宙』今森光彦著
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
かつてどこにでもあった田んぼや雑木林は、多くの人にとって心のふるさとになってしまった。しかし、諦めるのはまだはやい。自然は手入れし、水と空気、土と太陽があれば再生する。
東京23区がすっぽり入る日本一の湖・琵琶湖のほとりにアトリエを構え、里山環境プロデューサーとしても活動する写真家が、四季折々の里山の自然、生命の循環を写し出す。
秋。紅葉のヤマウルシの上で気配を消して獲物を待つオオカマキリの影。冬。葉のまわりにびっしりと霜をつけ、ガラス細工のように輝くノバラ。田んぼのあぜ道にタンポポの黄色いベルトができる春。そして、草いきれが匂い立つような夏の田園には太陽が燦々(さんさん)と降り注ぐ。
人と自然とがせめぎあい、共存する里山で、虫や植物など“相棒”たちに向ける今森さんの眼差(まなざ)しはとてもやさしい。(クレヴィス、3300円)