『「快慶作品集」』佐々木香輔(きょうすけ)著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

『「快慶作品集」』佐々木香輔(きょうすけ)著

[レビュアー] 読売新聞

 運慶と並び称される鎌倉時代の仏師・快慶は、端正でありながら優美、どこか親しみを感じさせる仏像を彫った。

 とりわけ多いのが像高1メートル前後の阿弥陀(あみだ)如来立像(三尺阿弥陀)。死に臨んだ人を西方浄土から迎えに来る姿を、金色の光に包まれた肌、慈愛を秘めた表情で表現した。

 著者は文化財の撮影で知られる奈良市の飛鳥園に2年、奈良国立博物館(奈良博)に写真技師として11年間勤務。2017年の「快慶」展などの展覧会図録や研究書の写真を担当したのち独立した。

 奈良博での仕事を収めた本書の写真は、快慶仏の造形を正確に捉えることを主眼としつつ、仏師の意図を読み取りながら撮影されている。闇に浮かぶ神々しい表情、流れるような衣のひだ。夕日に輝く堂内に立つ兵庫県・浄土寺の阿弥陀如来と両脇侍――。

 撮影体験をふまえ、著者は快慶を「生涯をかけて光を探究した仏師」と呼ぶ。快慶仏を見る楽しみが増えた気がした。作品解説は奈良博の山口隆介主任研究員が執筆。(東京美術、3520円)(高)

読売新聞
2023年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク