『平尾誠二 ラグビーを愛し、ラグビーに愛された男』岡村啓嗣著

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『平尾誠二 ラグビーを愛し、ラグビーに愛された男』岡村啓嗣著

[レビュアー] 読売新聞

 この10年ほどで、日本のラグビーは長足の進歩を遂げた。それでも「ミスー・ラグビー」と聞けば、ファンは今なお、2016年に53歳で早世した平尾誠二さんを思い浮かべる。

 写真家の岡村啓嗣(ひろつぐ)さんは、平尾さんが同志社大の1年生だった頃から35年間、その人生に寄り添い、撮影し続けてきた。集大成の写真集を出す「最後のチャンス」は2023年ラグビーW杯後の暮れだと考え、撮りためた5万カットから222枚を厳選した。

 日本選手権7連覇に導いた神戸製鋼の赤いユニホームで楕円(だえん)球を追うプレー写真は、やはり格別に輝く。表情がさえた瞬間をとらえたアップの数々はまぶしい。ノーベル生理学・医学賞の山中伸弥さん、棋士の羽生善治さんら各界の盟友と笑顔で納まった2ショットも。この本でしか出会えない平尾さんの姿が確かにある。

 あとがきに「わたしは一緒にいるだけで楽しく、幸せだった」と記した。この一冊は、写真家が被写体に注いだ「愛の結晶」である。(神戸新聞総合出版センター、4950円)(駿)

読売新聞
2024年1月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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