『日本の都市100年地図』今尾恵介著

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日本の都市100年地図

『日本の都市100年地図』

著者
今尾 恵介 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
歴史・地理/地理
ISBN
9784309228983
発売日
2023/11/27
価格
19,800円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『日本の都市100年地図』今尾恵介著

[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)

 今から100年ほど前の全国100都市の市街図を集めた本書を見ると、軍用地が目立つ。江戸時代の藩の中心だった城跡は、師団司令部などになり、広大な敷地は練兵場、射撃場などと表記されている。現在の東京ドーム付近は小銃など兵器を製造した砲兵工廠(こうしょう)。お茶の水女子大などのある文教地区には兵器支廠(陸軍大塚弾薬庫)があった。

 中でも広島市は別格だ。城跡には陸軍第5師団司令部や歩兵第11聯隊(れんたい)があり、陸軍兵士を戦地に送った宇品港周辺にも軍関連が多い。100年前に生まれた男子は、兵員不足を補うため1943年に始まる学徒出陣の対象になり、宇品から乗船した若者も多かった。

 45年8月6日。軍都に原爆が投下され、地図が伝えてきた人々の暮らしは一瞬にして消え去った。わずかとはいえ爆心地で建物が残ったのは、相生橋のたもとにある「物産陳列シヨ」と表記された今の原爆ドームである。(河出書房新社、1万9800円)

読売新聞
2024年3月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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