『23区格差』
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【話題の本】『23区格差』池田利道著 「格差」を「個性」に変えるヒント
[レビュアー] 海老沢類(産経新聞社)
港区904万円、足立区323万円-。帯に記されたデータは、総務省調査によるそれぞれの区民の所得水準(平成24年)だ。東京への一極集中が進み、都市と地方の格差が指摘されている。だが冒頭の数字にも顕著なように、23区内でも格差は歴然と存在する。東京23区研究所所長が豊富なデータをもとに具体例を示していく。
読み進むたびに先入観を揺さぶられる。人口増の中心は山の手エリア、というのは間違いだし、西日本出身者は西部・南部に住むというのも都市伝説のたぐいらしい。一方で、老人クラブ加入率を切り口に、人気の高い世田谷区の知られざる「内々格差」も浮き彫りに。
10日の発売で、すでに3刷1万8000部。わが街のポジションを知りたい都民と、住む場所を決めかねている人々の心をつかんだ。
「タイトルからは『東京』の文字をあえて外した。全国の自治体の参考になる一冊ですから」と担当編集者の吉岡宏さん。全区の“実力”を診断する〈23区の通信簿〉の記述は温かい。板橋区は〈ヘソはないけどホネは太い〉、北区は〈ひそかにねらう大逆転〉…。「格差」を「個性」に変えるヒントは、悩める自治体を勇気づけるはずだ。(中公新書ラクレ・880円+税)
海老沢類