『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター ベーシック』
- 著者
- ジョエル・サートレイ [著]/ヘザー・ペリー [著]/ナショナル ジオグラフィック [編]/関利枝子 [編]/武田正紀 [編]
- 出版社
- 日経ナショナルジオグラフィック社
- ISBN
- 9784863134799
- 発売日
- 2020/06/25
- 価格
- 3,850円(税込)
世界最高レベルの写真家がノウハウを教えてくれる
[レビュアー] 都築響一(編集者)
オリンパスが映像事業をファンドに譲渡したり、創刊94年の「アサヒカメラ」が休刊したりと、年季の入ったカメラファンを悲しませるニュースが今年は続いた。
カメラ業界の不振をスマホのせいにする論調は多いけれど、それは古書店の不振をブックオフのせいに、商店街の不振をイオンタウンのせいにしたりするのと同じで、全面的に正しいとは言えない。カメラが売れなくなったのは、カメラ業界がハイエンド・アマチュアばかりを向いた製品開発をしてきたからだ。ものすごく高価で、ものすごく多機能な新製品をひたすらすすめるカメラ雑誌と(言い方は悪いが)レッスンプロ、やたら難しい解説書……そういうすべてが「気楽に楽しく、きちんと写真を撮りたい」という一般人をカメラ屋から遠ざけてきた。
本書は2012年に出版された『ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター』のアップデート版。ナショジオという世界最高レベルの写真雑誌の写真家たちが、初心者に向けて「これだけは知っておいたほうがいいし、これだけ知ってればあとはどんどん撮ればいい」というノウハウを教えてくれる。
どういう機材があればいいか、被写体とどう向き合い、写真にいちばん大事な3要素―「光」「色」「構図」―をどう捉えるか、そして撮影後はどうパソコンで後処理をするか。ほんとうに基本的で、でも僕も一応プロの写真家なので、これだけわかってれば大丈夫! と自信を持ってお勧めできる内容になっている。
きれいな写真を撮るだけならもうスマホで充分だが、その上を目指したいひとは、ほどほどのデジタル一眼レフとしっかりした三脚、高性能のパソコンと現像ソフト、それにこの本があれば、あとは解説書を百冊読むよりも、カメラを持って外に飛び出したほうがいい。これはそういうレベルの教科書だ。