第37回織田作之助賞が決定 温又柔『魯肉飯のさえずり』が受賞

文学賞・賞

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 第37回織田作之助賞の選考会が9日に行われ、温又柔さんの『魯肉飯のさえずり』(中央公論新社)が選ばれた。

 受賞作『魯肉飯のさえずり』は、台湾から日本に移住した母と、日本で生まれ育った娘を通して言葉にできない心の痛みを描いた長編小説。

 著者の温又柔さんは、1980年台湾・台北市生まれ。3歳の時に、家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育つ。2006年に法政大学大学院・国際文化専攻修士課程修了。2009年に「好去好来歌」ですばる文学賞佳作を受賞し、作家デビュー。2013年から音楽家・小島ケイタニーラブと共に朗読と演奏によるコラボレーション活動〈言葉と音の往復書簡〉を開始する。同年、ドキュメンタリー映画『異境の中の故郷――リービ英雄52年ぶりの台中再訪』(大川景子監督)に出演。2015年、台湾語・中国語・日本語の三つの母語の狭間で揺れる自身のルーツを探った4年間の歩みを綴ったエッセイ集『台湾生まれ、日本語育ち』を刊行している。

「織田作之助賞」は、小説のみならず評論活動でも活躍し、日本文学に一時期を画した織田作之助の生誕70年を記念して1983年に創設された文学賞。対象期間中に刊行された新鋭・気鋭の作家の単行本に与えられる。第37回の選考は、いしいしんじ、重里徹也、芝井敬司、高村薫、田中和生の5氏が務めた。

 昨年は、窪美澄さんの『トリニティ』(新潮社)が受賞。過去には柴崎友香さんの『その街の今は』(第23回)、西加奈子さんの『通天閣』(第24回)、小山田浩子さんの『工場』(第30回)などが受賞している。

 第37回の候補作品は以下のとおり。

『魯肉飯のさえずり』温又柔[著]中央公論新社
『愛されなくても別に』武田綾乃[著]講談社
『ピエタとトランジ<完全版>」藤野可織[著]講談社
『人間』又吉直樹[著]毎日新聞出版
『黄色い夜』宮内悠介[著]集英社

Book Bang編集部
2020年12月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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