【話題の本】『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』伊藤俊一著

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■硬い歴史書に異例の反響

日本の中世史を特徴づける風景である荘園。中央の貴族や寺社などが私有する農園のことで、律令国家の公地公民の例外として始まり、平安末の院政期に本格化し、応仁の乱を境に解体していった。

マルクス主義歴史学の影響で戦後のある時期までは熱心に研究されたが、以後は下火になった感がある荘園研究。本書はこれまでの膨大な研究蓄積を整理して近年の成果も反映させた上で、飢饉(ききん)発生や農法の変化と気候変動との関係にも踏み込む。長らく待望されていた手に取りやすい荘園通史だ。

9月下旬に初版1万3000部でスタートした直後から反響が大きく、たちまち1万部の増刷が決まった。多くの人が名前は聞いたことがあるが、詳しい内容は知らない歴史事象を深掘りしてヒット作となったパターンとしては、近年の同レーベルのベストセラー『応仁の乱』の売れ方も想起させる。

担当の並木光晴さんは「想定以上の初速で驚いた。特に中学、高校の教員から好反応を得たようだ」と話す。決して簡単ではない日本中世のエッセンスを的確に伝えたいという需要を掘り起こしたのかもしれない。(中公新書・990円)

磨井慎吾

産経新聞
2021年10月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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