『「海の民」の日本神話』
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『「海の民」の日本神話 古代ヤポネシア表通りをゆく』三浦佑之著
[レビュアー] 産経新聞社
「ヤポネシア」とは作家の島尾敏雄の造語で、日本列島を太平洋に浮かぶ島の連なりとして位置づける言葉だ。古事記研究で知られる国文学者の著者は大陸と向き合う弧状列島としてこの語をとらえ直し、律令国家「日本」が成立する前の列島の姿を神話や伝承を手掛かりに復元しようと試みる。
中心になるのは日本海側で、舟が主要交通の古代においてはこちらが「表通り」だった。古事記の神話の4割が出雲を舞台にしており、同地をネットワークの重要拠点とみる。都を中心にした律令国家の陸の道とは異なる海の道の拠点間の対等性など、興味深い指摘は多い。(新潮選書・1595円)