<書評>『カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』柳瀬博一 著

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カワセミ都市トーキョー

『カワセミ都市トーキョー』

著者
柳瀬 博一 [著]
出版社
平凡社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784582860498
発売日
2024/01/17
価格
1,210円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』柳瀬博一 著

[レビュアー] 永江朗(書評家)

◆自然と共存のためのヒント

 清流の宝石とも呼ばれるカワセミ。公害など環境の悪化により、東京からは姿を消したと思われていた。それが帰ってきた。しかも都心で。コロナ禍の中の2021年5月、著者は都内の川でメスのカワセミと遭遇する。そこから著者の観察と考察が始まる。

 カワセミが戻ってきたのは環境が改善されたからだが、カワセミの適応ぶりにも驚く。たとえば巣作り。コンクリートで固められた都心の川で、水抜き穴をうまく使って子育てをしている。川に投棄された自転車は魚たちの住処(すみか)となり、カワセミにとっては恰好(かっこう)の漁場だ。

 著者はカワセミが暮らす場所には共通点があることに気づく。それは都内でも屈指の高級住宅地であること。小さな流域を持つ小さな川が流れていること。そして、江戸時代には大名屋敷などがあり、いまも公園や学校敷地などとして自然が保たれていること。

 カワセミたちが暮らす街は恵まれた場所にある。ここには、人間が自然と共存していくヒントがたくさんある。

(平凡社新書・1210円)

1964年生まれ。東京工業大教授。著書『国道16号線』など。

◆もう一冊

『都会の鳥の生態学』唐沢孝一著(中公新書)

中日新聞 東京新聞
2024年2月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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