池澤夏樹の知力はいかにして維持されるのか――

レビュー

4
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知の仕事術

『知の仕事術』

著者
池澤 夏樹 [著]
出版社
集英社インターナショナル
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784797680010
発売日
2017/01/12
価格
799円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

旺盛な知力の源泉が明かされる!

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 完結した個人編集の世界文学全集に続いて、日本文学全集を編んでいる池澤夏樹。しかも刊行中の『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』全30巻(河出書房新社)では、現代作家による古典の新訳という試みを行っている。たとえば江國香織「更級日記」、古川日出男「平家物語」、そして堀江敏幸「土左日記」といった“キャスティング”は、池澤氏ならではのものだ。

 小説や書評などの仕事と並行しながら、これだけの取り組みを展開する知力は、いかにして維持されるのか。そんな疑問に答えたのが、新著『知の仕事術』である。

 軸となるのは、本をめぐる具体的なノウハウだ。生きていく上で必要なものとして、著者は「情報」「知識」「思想」の3つを挙げ、それらの「源泉」として本を重視する。「本の探しかた」では書評の有効性を示し、「本の読みかた」では速読と精読の使い分けから、“知的労力の投資”と呼ぶ古典との付き合いかたまでを語っていく。

 また、「モノとしての本の扱いかた」として、6Bの鉛筆による書き込みや小さな付箋の使いかたなどを公開。そして本好きが誰でも直面する、蔵書とスペースの問題についても、「本の手放しかた」の章で詳述している。中でも自分と本の関係を、ストックとフローの2種類で考える方法が興味深い。「いま」必要な本を書棚に置く覚悟だ。

 さらに本以外でも、独自の時間管理法やアイデア整理術などが、実践的技術論として大いに参考となる。

新潮社 週刊新潮
2017年2月9日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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