【今週の労務書】『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

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人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

著者
玄田 有史 [編集]
出版社
慶應義塾大学出版会
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784766424072
発売日
2017/04/14
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【今週の労務書】『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

[レビュアー] 労働新聞社

大きい氷河期世代の余波

 景気回復といわれ有効求人倍率も上昇するなか、労働者の賃金は一向に上がったようにみえない。この疑問に労働関係の学者ら22人が答えを導き出そうとしたのが本書。

 たとえば、額面という名目上の賃金を引き下げられない「賃金の下方硬直性」が、「賃金の上方硬直性」につながっていると指摘。不況期に賃金を引き下げられず人件費調整に苦慮した企業ほど、好況に転じてもリスクを感じ引き上げない傾向があることを、理論、統計分析の両面から明らかにする。また、就職氷河期世代を境に賃金が大きく減少し、余波が下の世代に影響しているなどの意見も。

 1つの明確な答えこそ出していないが、日本の賃金や経済を考える様ざまな視点を与えてくれる。

(玄田有史編、慶應義塾大学出版会刊、TEL=03-3451-0931、2000円+税)

労働新聞
2017年5月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

労働新聞社

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