『痛覚のふしぎ 脳で感知する痛みのメカニズム』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
医者でも口を濁す“痛み”とは何か?
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
あなたはどんな時に病院に行って診てもらおうと思いますか。めまいがする、食欲がないなど肉体的な不具合は多様だが、人が病院を訪れる理由の第一位は「痛み」。肉体的不快感のなかで最も耐えがたく、日常生活にも影響するからだ。痛みは肉体の発する緊急信号。だからこそ痛む原因を早くつきとめたいと誰もが思うのだろう。
ところが、病院では「痛み」そのものについてはあまり教えてくれない。痛む理由や、痛みを抑える薬その他の方法はどのようなしくみで「効く」のかということは、簡単には伝えにくいのだ。医師としては雑な説明をするわけにもいかず、なんとなく濁しておくのだろう。
そんな場合には本に頼るのが正解。新書はサイズも価格もお手頃だ。伊藤誠二『痛覚のふしぎ』は、痛みの種類、神経を通じて脊髄から脳へ伝えられる痛みの伝達経路、一過性の痛みと慢性痛との差異などについて正確に説明してくれる。高校程度の理科知識で読めるし、分子構造式など見るだけで頭痛がするという人でも文章だけたどれば、ちゃんと意味はとれるようになっている。必要な部分だけの拾い読みもOKだ。
痛みに苦しむ人やその家族は、こういう本を携えるというカタチから入ろう。読むのはボチボチでもかまわない。痛みが自分を圧しつぶすような強敵に見えても、知識を得ることで「構え」が生まれ、人は前向きになれる。本を買うことはその第一歩です。