燃え殻×大槻ケンヂ 大人にだってフューチャーしかない/燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』刊行記念対談

対談・鼎談

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ボクたちはみんな大人になれなかった

『ボクたちはみんな大人になれなかった』

著者
燃え殻 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103510116
発売日
2017/06/30
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

【燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』刊行記念対談】燃え殻×大槻ケンヂ/大人にだってフューチャーしかない

[文] 新潮社

過去に生きるボクたちのフューチャー

大槻 この本は一言でいえば青春の回想ですけれど、やっぱり「わからなさ」を抱えたまま大人になったサブカル男子女子は、どうしても過去に生きる傾向にあるんですよね。そこらへんの痛いところを突いてるよなあ。でもこれ3年後自分で読むと恥ずかしさに「ヒィッ」てなる本だと思うよ。僕も『リンダリンダラバーソール』を文庫化するとき、なった。

燃え殻 マジですか。なにそれ怖い。

大槻 でもそれって物書き共通の恐怖だと思うのよ。夏目漱石も『こころ』を書いた3年後にね、「流石に先生もこんな長い手紙出さないだろ」って思ったはずなんだよ。そもそも『こころ』って何だよ! みたいになったと思うね。

燃え殻 ずいぶん大づかみに出ちゃったな! みたいな。言われてみれば『人間失格』も相当言い切った感あるな。

大槻 『罪と罰』なんて言うも言うてみたよなあって、そっと肩に手をおきたい。

燃え殻 大文豪にそんなこと言ったらダメですよ!(笑) でも僕、3年後46歳なんですよ。46歳で「大人になれなかった」とか言ってたら、落ち込みますよ。死んだ方がいいってなるかもしれない。

大槻 僕いま51歳だけど、そんなこと言うなら本当に死んじゃうもん、そろそろ。

燃え殻 やめてください(笑)。でも過去の整理はついてくるんですか、先輩。

大槻 自分の落としどころを見つける感じですかね。決まり文句をいろいろ考えて。「めちゃくちゃだったけど、フランス映画みたいでお洒落だな」とか。アラン・ドロンみたいな気持ちになるわけです。

燃え殻 過去を肯定しようと?

大槻 うん。それでも痛い過去にとらわれたときは、指を1本自分の前に出して、一言「フューチャー!」って叫ぶんです。

燃え殻 大槻さん、大丈夫ですか(笑)。

大槻 大丈夫です。フューチャー!

燃え殻 フューチャー……。

大槻 過去じゃないだろう。未来だろう。フューチャーって。

燃え殻 その指はポイントなんですか。

大槻 ポイントです。プロレスの木村健悟のイナズマと一緒です。

燃え殻 あの、違うと思うんですが(笑)、それはいつ使ってもいいんですか?

大槻 うん、だから誰かが過去にとらわれた話を始めたときも、使えます。俺は観てないけど、『ラ・ラ・ランド』の話になると、みんなしみじみ語りだすから、今度絶対言ってやろうと思ってんの。

燃え殻 さっきからその例えよく言いますよね、観てないのに(笑)。

大槻 あ、もうひとつあります。昔『ぎんざNOW!』っていう番組があって、せんだみつおとかの「ナーウ」っていう決め台詞があったの。飲み屋とかで誰かが、過去の回想を始めたときは「ナーウ」って言ってもいいんです。それでも止まらないときは「フューチャー!」です。過去は過ぎ去り、ないんです。

燃え殻 なるほど、いいこと聞きました。

大槻 うん。そうすれば、みんなハッとなって、「つくねください」っていう話に戻りますから。

燃え殻 そこは焼き鳥屋だった(笑)。わかりました。やってみます。

大槻 燃え殻さんも、過去のことを書いたから、今「ナウ」があるので、次は「フューチャー」を書かんとですよ。

燃え殻 フューチャー!

新潮社 波
2017年9月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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