あの『源氏物語』全巻を文庫本に収録
[レビュアー] 図書新聞
世界最古の長篇物語で日本の国民文学である『源氏物語』。その新日本古典文学大系版(岩波書店)が文庫で読めるようになった。文字の大きな本文に加えて、1ページをまるまる割いた詳細な注解・補訳という構成となっており、とても読みやすい。さらに文庫化に際して陣野英則、田村隆といった源氏研究者が編集協力者として最新の研究成果を盛り込み、学術面においても充実した内容となっている。『源氏物語』の現代語訳は読んだことがあるけれども、原文までは難しそうでちょっと……という人にちょうど手が届く、絶好の一冊だ。全9冊の刊行予定だが、文庫版でこのボリュームと内容ならば、集める価値が大いにあるだろう。(柳井滋・室伏信助・大朝雄二・鈴木日出男・藤井貞和・今西祐一郎校注、7・14刊、六二四頁・本体一三二〇円・岩波文庫)