『築地魚河岸ブルース』
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【写真集】『築地魚河岸ブルース』沼田学 自信と誇りに満ち
[レビュアー] 渋沢和彦
移転問題でなにかと話題になっている東京の築地市場。本書には魚市場にもかかわらず、肝心の魚が写っていない。市場そのものではなく、働く人たちにスポットを当てた。なかでも主役は場内を勢いよく走る運搬車のターレを操る者たちだ。
笑顔のはじけた優しい顔もあれば、ねじりはちまきで鋭い眼光のいかつい顔も。りりしい女性の姿もある。皆、自信と誇りに満ちている。
写真家の沼田さんは昭和47年、北海道生まれ。主に雑誌や広告などを中心に活動している。築地では特定の場所にカメラを構えて1年間ほど費やして撮影したという。
今年1月、東京・新宿のギャラリーで開催した写真展「東京魚河岸ブルース」がネットなどで話題となり、本書の出版につながった。
「威勢がよく、人好きで面倒見がよく、粋で、とにかく格好良いのだ。みんな本当に人生がにじみ出たいい顔をしている」と沼田さんはあとがきに記している。
長靴が一番似合う人たちのポートレート。男の顔に刻まれたシワから生き方が伝わってくる。(東京キララ社・2000円+税)
渋沢和彦