「いつも誰かと一緒にいる」のをやめてみる。ひとりで自分と対話する「内省」の大切さ

レビュー

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孤独をたのしむ力

『孤独をたのしむ力』

著者
午堂登紀雄 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784534055378
発売日
2017/11/02
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「いつも誰かと一緒にいる」のをやめてみる。ひとりで自分と対話する「内省」の大切さ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

多くの人は、「孤独」や「ぼっち」という言葉にネガティブな印象を持っていると指摘するのは、『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(午堂登紀雄著、日本実業出版社)の著者。そのため孤独を避けようとし、ひとりでいるところを見られまい、知られまいと振る舞うというわけです。

しかし本当は、孤独がみじめなのではなく、「孤独はみじめだ」と思い込んでいる自分の固定観念に問題があるのだといいます。しかし、それでは我慢して周囲に合わせて生きることになるので、いずれ精神的につらくなるもの。そのため人間関係に疲弊し、行き詰まってしまう人が出てくるということ。

そんな時代環境だからこそ獲得したいのが「孤独力」です。

本書でいう孤独力とは他人との接触を避け、物理的な孤独の状態そのものを愛するような、自閉的な意味ではありません。

孤独力とは、社会の中で人と関わり合いながらも、つねに自分の意思を主軸に置いて、自己責任で生きようとする姿勢のことです。

(「孤独をたのしむ力——はじめに」より)

この姿勢があれば、誰かと一緒でも楽しめるし、ひとりでも楽しめると著者はいいます。したがって、物理的に孤独になったとしても寂しさを感じることがないわけです。そして、そうした感覚を強く持つためには、自分との対話、つまり内省という習慣を手に入れることが大切なのだとか。内省とは、自分の価値観を受け入れ、それをベースに経験を振り返って分析し、思考体系と行動体系を軌道修正し、自らを成長させていくという、高度に知的な作業だというのです。

そこで本書では、寂しさという意味でのネガティブな孤独ではなく、人間が精神的に成熟するための必須体験としてのポジティブな孤独を紹介しているわけです。きょうは第1章「内省」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみましょう。

「孤独を恐れる」のをやめる

やめられない人 個性が磨かれない。

やめられた人 個性が磨かれ、魅力が増す。

(14ページより)

孤独を恐れる人は、自分をよりよく知ることができないもの。なぜなら、いつも誰かと一緒にいたり誰かとつながっていたりするため、ひとり内省する時間が十分にとれないから。

いい例が、就職に際して自分の適性がわからない、なにがやりたいのかわからないという人。そういう人は、本当の自分が見えていないということです。自分と対話することに慣れていないから、いきなり素の自分に直面しても戸惑ってしまうというのです。

「将来に希望が持てない」という思いも同じ。自分の得意不得意を認識していないから、なにをしていいのかわからず、不安感や絶望感に襲われるわけです。しかしひとりで内省すれば、自分の長所も短所も含め、「ありのままの自分」を知ることが可能に。そして自分を知れば知るほど、それを活かす道も見えてくるものでもあります。本来の自分を活かせば、より個が輝き、それが自信になり、ますます「ありのままの自分でいいんだ」という確信が持てるようになるわけです。

「才能とは、自分自身を、自分の力を信じることだ」と言ったのは、ロシアの作家マクシム・ゴーリキーですが、自分の力を信じられれば、その能力を大事にして伸ばしていこうと考えます。自分の個性や才能を磨くことが生きがいになれば、孤独感とは無縁になります。

同時に、そんな確信があれば、仮に他人からネガティブな評価や反応を受けたとしても、本当の自分に照らして受け止める、あるいは聞き流すという選択が、自らの意思でできます。

自分と対面して、「たしかにそうかも」と思えたとしても、「でも、このままでいいんだ」「そうか、次からはこうしよう」という自分で納得できる判断につながります。(16ページより)大切なのは、自分を否定したり嫌ったりするのではなく、自分の本心を受け止め、それを肯定すること。「自分は弱い人間だ」と思ったとしても、「それはそれでいい。それでもここまで進むことができたのだから」と考えるべきだということです。

そして、弱い自分をオープンにしていくべきだとも著者は主張します。自分を飾ったり無理に大きく見せようとするのではなく、「自分は弱い人間かも知れないけれど、それが自分なんです」と、いまの自分をさらけ出すということ。そうやって自分を肯定し、それを外に出し続ければ、弱い自分であっても納得感が出てくるもの。そして、見栄を張ったり過剰に他人の目を気にしたりすることもなくなるというわけです。著者はそれを、「いい人であろうとしないといけない、自分を抑えて周囲と合わせないといけない」という脅迫観念からの脱却を意味すると主張しています。

ただし、ありのままの自分を受け入れ肯定することは、自分がこれ以上成長しなくていいとか、不満な現状に甘んじるという意味ではなく、意地になって我を通すことでもなく、「現時点までの自分はこれでよい。否定もしない」ということ。

本来、自分は世界でたったひとりの唯一無二の存在であるはず。なのに孤独を楽しめない人、孤独を恐怖に感じる人は、他人から嫌われないように、仲間はずれにされないように、自分の本音を抑え、周囲に迎合しようとするもの。しかし、孤独を避けようという努力は、自分をごまかすことにほかなりません。そのため、「自分はこういう個性を持った、こういう人間である」と信じるアイデンティティ(自我)が確立しにくいというのです。

その証拠に、孤独を寂しいと感じる人は、不安を感じやすく情緒も不安定になりがち。それは自我の貧困さからくる感情であり、つまりは精神が成熟していないということ。しかし自我を確立できていれば、情緒も安定し、孤独を豊かな時間と感じられるものなのです。

人が孤独感を覚えるのは、本当に自分を理解してくれる人がいないと感じたときだと著者は指摘します。自分の考えが受け入れられない、あるいは周囲から疎外されているような、自分が無視されているような感じ。もちろん周囲とうまくやって行くことを優先し、自分を貫かず周囲に合わせていれば、周囲とぶつかることも少なくなるでしょう。

しかしそれでは本心で生きていることにはならないので、自分がまわりに受け入れられているという実感に繋がらないわけです。いわば孤独を避けるために自分を抑えてまわりに合わせようとすればするほど、誰かと一緒にいても「孤独感」に襲われやすいということ。

一方、自分の本音を出し、意志を貫き、自分の能力を発揮しようとすれば、ときには周囲と摩擦が起きるかもしれませんし、それで離れていく人もいるでしょう。とはいえ、自分を嫌う人がいるとわかっていても、自分がやりたいことを貫くのは、自分の人生を大切にしているということだと著者。それでも自分の個性を表現していれば、そこに魅力を感じる人も増えていくということです。(14ページより)

「いつも誰かと一緒にいる」のをやめる

やめられない人 内省の時間がとれない。

やめられた人 内省し、人生の主導権が手に入る。

(20ページより)

ひとりで自分と対話する「内省」の時間が必要だと著者はいいます。

同じ会社に勤めていても、「仕事が楽しい」と感じる人もいれば、「つまらない」と辞めていく人もいるでしょう。同じ日本に生きていても、「幸せだ」と感じる人がいる一方、「不幸だ」と感じる人もいます。客観的な「楽しい」「つまらない」「幸せ」「不幸」という状態があるわけではなく、その状態を「自分がどう受け止めるか」によって変わるということ。

それを前向きな受け止め方に変えるには、自分から離れたところから、自分の心の動きをあるがままに見つめることができる、「もうひとりの自分」を育むことが大切だといいます。つまり、それができるのが内省。内省を繰り返していると、自分の深層からの声がより早く帰ってくるようになるそうです。そして、自分の深層の声を上手に聞けるようになると、迷っていることにも直観的に、自分の意に沿った判断ができるようになるのだとか。

また、過去の出来事や経験を振り返って観察し、それを「履歴」として整理しておくことで、自分の身のまわり起こることはある程度予測できるようになるもの。「想定の範囲内」と解釈できるようになるわけです。そういう積み重ねがあれば、自分がやろうとしていることに対してどのような事態が発生するか、どのように対応するかをあらかじめ想定できるため、それが心の安定や余裕につながっていくということです。

さまざまな刺激や変化、日々の忙しさのなかにおいても、つねに自分の立ち位置を把握し、どう振る舞うべきかがわかるため、自分の人生を生きている実感、幸福を実感できるようになるわけです。さらに自分の使命、果たすべき役割、貫くべき仕事やその方向性が見えるようになると、自分の人生を自分で導き演出している「握っている感」が得られるようになるともいいます。

さて著者は、内省作業の第一歩として「出来事→感情→思考→行動→結果」というサイクルを意識してみることをオススメしています。仮になにかの「出来事」にイラッとするような「感情」を抱いても、いきなり「行動」に移すのではなく、その感情をいったん受け止めて「思考」というクッションをはさむべきだというのです。

そして、どのような「行動」がどのような「結果」を招くのかを想像し、自分はどうすることがベストなのかを考え、そのうえで行動するということ。いわば、理性を働かせるということです。

そのような内省作業が習慣になると、怒りや不安といったネガティブな感情に襲われたとしても、それがもとで自分の人生を破壊させるような行動をとることはないということ。感情に支配されて自分を失うことはなく、瞬時にもうひとりの自分が発動し、後悔の少ない、より合理的な行動をとることができるというわけです。そうした姿勢は、より満足度の高い生き方につながるといいます。(20ページより)

たとえば「インスタ映え」を過剰に意識する人がいますが、もしかしたらそういう人の意識の根底にも「孤独に見られたくない」という思いがあるのかもしれません。でも、本当に大切なことはもっと別なものであるはず。そういうことを再確認するためにも、ぜひ読んでおきたい1冊です。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2017年11月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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